「努力家で、仕事ができて、社交的で。なんでもできる妻だった」。兵庫県西宮市北六甲台1で、夫婦で理容室を営んでいた西野道晴さん(83)は、尼崎JR脱線事故で妻節香さん=当時(63)=を亡くした。あれから18年。自身も年を重ね、何度も病気に見舞われた。それでも形見となったはさみを手に、思い出が詰まった店に立ち続けている。「まだこっちに来るには早い。家族を守ってあげて」と言われている気がして。
■「冷静に、常に次を考える人だった」
事故当日は月曜日で、週に1度の定休日だった。「買い物に行ってくるね」。節香さんはそう言って家を出た。事故が起きたのは、1時間後だった。
「家内ならすぐに前を向く」。自分に言い聞かせて、わずか1週間後に店を再開させた。それからは、子どもの頃から店を手伝っていた理容師の長男勝善さん(53)と二人三脚の日々が続く。道晴さんは「生きていれば苦しいこともあるし、不満を言えばきりがない。でも家内は冷静に、常に次を考える。そういう人だった」と振り返る。
■「本当にいい人に巡り合えた」
2人は松山市の理容学校の先輩と後輩だった。節香さんは「前向きで過去にとらわれない」。内に秘めた強さに引かれた。
尼崎市や大阪府枚方市で店を営んだ後、結婚から20年ほどたった1985年、西宮市北部のニュータウンに移って店舗兼住宅を構えた。あえて駅前や繁華街ではなく「住宅街で常連さんに支えられる店にしたい」と思った。
店はすぐに常連客でにぎわうようになった。柔らかな受け答えで利用客の話に耳を傾ける道晴さんと、趣味や健康法など話題が絶えない節香さん。特に節香さんはパーマが得意で、市外から訪れる人も少なくなかった。店の大黒柱のような存在だった。
海外旅行に行ったり、高級車に乗ったりというぜいたくをしたことはない。それでも道晴さんは「穏やかで幸せな生活。本当にいい人に巡り合えて良かった」と思っていた。事故はそんな生活を一変させた。
■2年間で6度の入退院
店の経営は10年前に勝善さんに譲ったが、道晴さんも節香さんのはさみを手に店に立ち続ける。「家内のは勝手が分かるし、使ってやった方が(はさみの)調子もいい」。大小さまざまな8本のはさみは、丁寧に磨き込まれている。
この2年間は、病気で6度の入退院を繰り返した。昨年末には右半身のしびれを感じ、脳出血と診断された。寝たきりの状態で、体に力が入らなくなった。「はさみを握れなくなるかもしれない」と覚悟した。
しかし、緊急手術とリハビリが奏功し、幸い後遺症も残らなかった。常連客に「帰ってこられてよかった」と喜ばれた。その空間が居心地がいい。「もうちょっと頑張れるよ」という妻の声が聞こえる気がしている。
18年の節目の朝、勝善さんと事故現場を訪れ、手を合わせた。「せっかくつながった命。まだまだ精いっぱい生きるから見守って」と語りかけながら。(谷川直生)
【尼崎JR脱線事故】2005年4月25日午前9時18分ごろ、尼崎市のJR宝塚線塚口-尼崎間で、宝塚発同志社前行き快速電車(7両編成)が脱線し、線路脇のマンションに激突、乗客106人と運転士が死亡、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った。JR西日本の山崎正夫元社長が業務上過失致死傷罪で在宅起訴され、井手正敬(まさたか)元会長ら歴代3社長も同罪で強制起訴されたが、無罪判決が確定した。
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