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夜間に道路上の区画線を引き直す業者=西宮市樋ノ口町2
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夜間に道路上の区画線を引き直す業者=西宮市樋ノ口町2
引き直したばかりの白線。塗料に混ざったガラスビーズが光を反射するため、夜間でも見やすい=西宮市樋ノ口町2
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引き直したばかりの白線。塗料に混ざったガラスビーズが光を反射するため、夜間でも見やすい=西宮市樋ノ口町2
道路区画線を引き直す前の県道門柳大門線=西脇市黒田庄町岡(兵庫県提供、2023年1月18日撮影)
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道路区画線を引き直す前の県道門柳大門線=西脇市黒田庄町岡(兵庫県提供、2023年1月18日撮影)
道路区画線を引き直した後の県道門柳大門線=西脇市黒田庄町岡(兵庫県提供、2023年1月23日撮影)
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道路区画線を引き直した後の県道門柳大門線=西脇市黒田庄町岡(兵庫県提供、2023年1月23日撮影)

 道路上の消えた白線3千キロを、兵庫県が5年かけて引き直す事業に取り組んでいる。交通量が多い場所では引いて1年ほどで薄れるという白線だが、昨今はドライバーや歩行者に路側帯や中央線を示すという本来の役割に加え、未来の自動車交通システムの基盤となる役回りも想定される。県は昨年度から年間予算を3倍に増額。4月末、夜間の引き直し作業を取材した。

 ■神戸-東京間の7倍

 道路の白線には、路側帯や中央線を示す「区画線」と、横断歩道や一時停止線などの「道路標示」がある。前者は国や県、市などの道路管理者、後者は都道府県公安委員会の管轄だ。

 兵庫県が維持管理する道路は神戸市内を除く県道と一部の国道で、総延長は約4800キロにもなる。各地の県土木事務所の黄色いパトロールカーが平日昼間や夜間に走り、異常がないか目視でチェックしている。

 県は必要に応じ、年間約1億4千万円の予算で約190キロずつを引き直してきたが、「線が消える速さに追いつかない状況」(県道路保全課)だった。交通量が多い都市部に加え、除雪車が走る降雪地帯などが特に消えやすいとされる。

 2022年度に区画線を一斉調査したところ、計約3千キロ分が消えたり薄れたりしていた。同じ道路に複数の線(中央と両側など)が引かれている場合もそれぞれ1本とするため、消えた合計は神戸-東京間の直線距離の7倍にも上る。

 ■未来への先行投資

 県は同年度から年間予算を3億円ずつ追加し、1年で600キロ、5年で3千キロ全てを引き直すことを決めた。さらに、新たに地域住民から情報があった場所も必要に応じて引き直す方針だ。

 今年1月に引き直した西脇市黒田庄町岡の県道門柳大門線は、小学校の通学路になっている。地元から「路側帯が示されて、道幅いっぱいに走る車が減った」「安全になった」と歓迎の声が上がっているという。

 白線がはっきり見えることでどんな効果が期待されるのか。白線施工の専門業者「白陽化学工業」(西宮市)の角田敏実神戸支店長(58)は「外側線や中央線が見えると心理的に車道が狭く感じられ、運転が慎重になり事故防止につながる」と話す。

 加えて、未来をにらんだ新たな役割もある。施工業者でつくる「兵庫県道路標識標示業協会」によると、近年開発が進む車の自動運転や車線逸脱防止システムは、車載のセンサーが白線を検知して稼働するものもある。「自動運転の導入が進む側面からも、全国的にも白線の引き直しに予算を投じる自治体が増えている」という。

 ■夜にも見やすい「隠し味」

 そもそも白線はどんな塗料を使い、いつ引き直しているのか。4月下旬、西宮市樋ノ口町の県道西宮宝塚線で、夜間の引き直し作業を取材した。

 現場は武庫川沿いの片側1車線道路。午後9時ごろ、白陽化学工業の作業員らが片側の通行を規制し、右折レーンを導くゼブラゾーンや境界線、外側線の引き直し作業を始めた。

 専用トラックの荷台で塗料を混ぜて200度に加熱し、作業用の手押し三輪車に注ぎ込む。「溶融式」と呼ばれ、素材は白色の顔料、石灰、ガラスを砕いたビーズ、路面に密着させるための合成樹脂などだ。

 作業員が三輪車を前に押すと、散布口から塗料が流れ出し、道路に厚みのある白線が引かれていく。この際もガラスビーズが散布されるので、夜間に光を反射し、見やすくなるという。

 明日の交通安全と未来の基盤整備に向けて、今夜もどこかの道路で白線が引き直されている。(金 慶順)

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