兵庫県伊丹市北部を流れる天神川の堤防が決壊した大雨被害を受け、斎藤元彦知事は10日の定例会見で、原因究明に向けて検証委員会を立ち上げる方針を明らかにした。河川工学や地盤の専門家で構成する予定で、人選を進めている。県は宝塚土木事務所に被災者向けの相談窓口も設置。今後、被害状況などを個別に聞き取り、補償も含めて対応を検討する。
武庫川水系の天神川は、周辺の土地よりも川底が高い「天井川」。現地では県が河川工事のため、幅約14メートルの川を土のう(高さ約2メートル)で半分に区切り、片側だけに水を流していた。
こうした工法は国のガイドラインに従って決め、工期も洪水が起きにくいとされる「非出水期」(11~5月)としていたが、今回は県の想定を上回る雨が降り、水位が急上昇。水が土のうを越え、約30メートルにわたって堤防を決壊させた。
斎藤知事は、会見の冒頭で「周辺住民に不安を与え、土砂の撤去などでも負担をかけた」とおわびを表明。国のガイドラインに沿った工事で決壊が起きたことを踏まえ、検証委では「設計や施工の状況、当時の流量などをしっかり分析し、非出水期の工事の在り方やタイミングを検討したい」と話した。
被災者対応については、宝塚土木事務所の武庫川対策室(TEL0797・83・3188)に窓口を一元化する。周辺では少なくとも12棟で床上・床下浸水が確認されるなど大きな被害が出ており、斎藤知事は「補償についても丁寧に対応したい」とした。
会見に先立ち、伊丹市の藤原保幸市長と現地も視察。被災者の一人から「流量が増えてきた際、早めに知らせてほしかった」との訴えが寄せられた。地域からは河川の状況を監視するカメラの設置要望もあり、近く、決壊地点の上流側と下流側に1カ所ずつ設ける。
また、県内には数本の天井川があるといい、梅雨入りまでに堤防の安全点検を実施する。
(田中陽一、上田勇紀)
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