東京電力福島第1原発事故で、福島、宮城県から兵庫県に避難した31世帯82人が国と東電に損害賠償を求めた訴訟が30日、神戸地裁(龍見昇裁判長)で結審した。原告2人が最終意見陳述に臨み、「被ばくの恐怖、言われもない偏見など苦しみは今も絶えない。どうか国の責任を明確にする判決を」などと訴えた。判決は来年3月21日。
原告らは、事故から1年半後の2013年9月に提訴。平穏な生活を奪われ、経済的困窮、放射能汚染による健康悪化の恐れなどの被害を受けたとして、国と東電に計約7億3600万円(1人当たり150万~1500万円)の損害賠償を求めている。
意見陳述で、福島県郡山市から家族で避難した原告代表の橋本洋一さん(59)=神戸市北区=は「妻や子どもたちの甲状腺異常、鼻血など事故前には考えられなかった症状が出てきた」と述べ、「判決で国や社会が正しい方向に進み、安心、安全な暮らしが営めるようになることを願います」と求めた。
宮城県白石市から兵庫県宝塚市に移った伊藤あかねさん(19)=岡山市=は、体調不良で欠席した母の書面を代読し、「この12年は苦難の連続でした」と訴えた。事故当時は6歳。短期避難を経て、被ばくを逃れようと翌年、小学2年のときに母と宝塚市に身を寄せた。公務員の父は古里に残ったが、14年に脳出血で他界した。母の陳述書には事故後の苦しみがつづられていた。
伊藤さんは今春、大学に進学し、親元を離れた。取材に「読みながら父のことを思い出した。母の本当の気持ちも知ることができた。関心が薄れている原発事故のことを伝えられたら」と話した。
兵庫を含め、同種訴訟は全国で約30件。昨年6月には最高裁が国の賠償責任を認めない判決を出した。東電の賠償責任は最高裁で先行して確定している。(篠原拓真、上田勇紀)
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