兵庫県は、職員の出勤率6割減に向けて新しい働き方を試すため、県生田庁舎(神戸市中央区中山手通6)に「モデルオフィス」を設けた。資料のデジタル化やオンライン会議など情報通信技術(ICT)を活用し、平日の勤務は出勤2日、在宅3日を基本とする。来年2月末まで月替わりで部ごとに入居し、課題を検証する。まずは5日から、総務部が同オフィスでの業務を始めた。
県の本庁舎を構成する主要な3棟のうち、1、2号館は大幅な耐震性能不足と診断され、2026年度からの解体が決まっている。現在、本庁舎では約3千人が働くが、県はローテーションを組んで1日の出勤者数を約1200人まで減らし、3号館の他、近隣の県公館と生田庁舎に分散して移す構想を描く。
モデルオフィスは広さ約750平方メートルで約150席あり、座席を固定しない「フリーアドレス」を導入。ウェブ会議用のブースや、休憩時間などに職員が集うコミュニケーションスペースも設け、さながら民間のコワーキングスペース(共有オフィス)のような雰囲気となっている。
一方、これまで県庁では紙資料の作成が基本だったが、保管も含めてデジタル化する「ペーパーレス」と「ストックレス」を推進。既に過去資料のデジタル化も進めており、インターネット上での共有によって、自宅のパソコンからでも操作できるようにしている。
試行の第1陣となる総務部には約270人が所属する。初日の5日は約110人が出勤し、残る約160人は在宅などで働いた。市町振興課の男性職員(33)は「元の職場では紙資料をたくさん広げていたけれど、意外とパソコンだけで完結できた。手元もすっきりして働きやすい」と前向きだった。
斎藤元彦知事も同オフィスで幹部職員とのオンライン会議に臨み、「(県庁解体の)ピンチをチャンスに変えたい。課題を共有し、改善のサイクルをつくっていこう」と呼びかけた。
県庁を巡っては1、2号館を集約する形で再整備する計画があったが、斎藤知事は21年の就任後に撤回。働き方改革の結果も踏まえて新庁舎の在り方を検討する考えで、両棟解体後の跡地はいったん緑地化する。
報道各社の取材に応じた斎藤知事は「従来の再整備計画なら費用が1千億円を超えていた」と指摘。「ダウンサイジング(規模の縮小化)を図ることで、浮いた予算を他の県民サービスに回せる」と強調し、緑地創出による神戸・元町エリアの価値向上、職員の仕事の質向上も狙いに挙げた。(田中陽一、金 慶順)
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