21日の第94回選抜高校野球大会1回戦で、高知に惜敗した東洋大姫路(兵庫)。今大会限りで退任する藤田明彦監督(65)の勇姿を見届けようと、観客席には関東で暮らす家族が駆け付けた。長女の橋本和佳子さん(33)=千葉県松戸市=は、通算19年にわたり単身赴任生活を続けながら母校を率いた指揮官を「尊敬する自慢の父」と慕い、感謝する。「またここに戻ってきてくれて、ありがとう」
OBの藤田監督は1997年に就任し、2006年に退任後、11年に復帰。「練習はうそをつかない」を信条に名門を鍛え上げ、今回は自身、春夏通算6度目の甲子園での采配だった。
自宅のある東京から一人離れて生活する父を、橋本さんは「人生を懸けて高校野球を指導する姿をずっと尊敬してきた」と言う。高校時代、野球部のマネジャーを務めたのも父の影響だ。「私も甲子園に行きたいと思っていた。選手としては無理でも、マネジャーなら甲子園で直接対戦できるかなって」。離れていても、心の中心にはいつも偉大な父がいた。
この日は胸に金縁の「TOYO」の文字が入った特製ユニホームを羽織り、親族総勢9人で最後の晴れ舞台を目に焼き付けた。瞳を輝かせてはしゃぐ長男理来ちゃん(4)は、最近野球を始めたばかり。東洋大姫路の校歌も歌えるようになった。指揮官の勇姿に拍手する息子に目を細め、橋本さんは「甲子園という舞台で指揮する父を見て何か感じてくれたかな」とうなずく。
試合後、藤田監督は聖地のバックスクリーンをじっと見つめ、グラウンドに深々と頭を下げた。「高校野球は人生そのもの。母校のユニホーム姿で終われた。最高の野球人生だった」と締めくくった父に「やっぱりきょうもかっこよかった」と橋本さん。家族一丸で駆け抜けた、熱く長い19年だった。(長江優咲、山本 晃)