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(1)人手不足 水産加工業再生の妨げに
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ハローワーク石巻で職を探す人。労働人口の減少が被災地に暗い影を落とす=宮城県石巻市
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ハローワーク石巻で職を探す人。労働人口の減少が被災地に暗い影を落とす=宮城県石巻市

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 建築資材を積んだ大型トラックが、土ぼこりを上げて行き交う。宮城県石巻市。沿岸部の水産加工団地では復旧が進み、約210社あった関連企業の54%が再開した。

 しかし、アミエビなどを加工する丸邦(まるくに)内海(うつみ)商店社長、内海邦雄(70)の表情はさえない。加工能力は震災前の7割ほどに回復。春の漁が始まり、水産加工が忙しくなる時期だが、「いくら募集しても人が集まらん。賃金が高い建設業に人手を奪われてしまって…」。

 ハローワーク石巻管内の昨年末の有効求人倍率は1・94倍で平成以降の最高値を更新。1倍を超すと求職者数よりも求人数が多い状態だ。水産加工で見ると実に3・7倍。まさに「超人手不足」なのだ。

 復興需要に沸いているはずの被災地を歩くと、求人数が多いというよりも、求職者数そのものが減少している実態が見えてきた。

 集団移転用の住宅整備が進まず、仙台など内陸部へ人口流出が続く。管内人口は震災前から1割減の19万5千人。基幹産業の水産加工業は沿岸に集中しており、津波の不安から「海辺で働きたくない」という人も多い。

 同ハローワーク産業雇用情報官の二階堂正彦(52)は「発生直後は仕事探しに奔走したが、今は逆。回復してきた仕事にどう人を振り向けるか。それが課題」と指摘した。地域再生の原動力となるべき仕事が、労働力人口の減少でこなせない。そんな窮状がにじんだ。

    ◇

 東北では土地のかさ上げや造成などの土木工事が続き、復興需要で地域経済は活況を呈している。東北大の昨年8月調査でも中小・零細企業の業況感は震災前を上回った。

 こうした「景気回復」の裏側で、水産加工など生業の分野では、人口減や後継者難、高齢化といった構造問題が頭をもたげつつある。震災で衰退が加速し、復興の足かせになりかねない。

 被災企業の調査を続ける東北大大学院経済学研究科准教授(金融論)の西山慎一(39)=神戸市須磨区出身=は警鐘を鳴らした。「復興需要がはがれたときが被災地の正念場。それまでに地域に根差した産業をどれだけ後押しできるか。それが阪神・淡路の教訓だ」

    ◆

 震災復興には3年の壁があると言われる。1995年の阪神・淡路大震災時も3年後の98年、復興需要がはがれ、地域経済は苦境に陥った。発生から11日で丸3年となる東日本大震災。岐路に差し掛かりつつある被災地経済の断面を見る。

=敬称略=(土井秀人)

 ▽被災地の有効求人倍率 震災後、復興需要などで建設業などの求人が急増し、全国平均を上回って推移。一方、沿岸部では内陸部への転居などで労働人口が減少し、人手不足が深刻な問題となっている。

2014/3/7
 

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