東日本大震災で叔母やいとこら身内4人を失った斎藤あゆみさん(36)=宮城県角田市=が、供養の気持ちを込めて、23日の神戸マラソンを走る。昨年に続き、2回目の出場。ウエストバッグには4人の写真を入れ、阪神・淡路大震災から復興してきた神戸のまちを見せるつもりだ。
震災では、きょうだい同然のようにして育ったいとこ姉妹と、その5歳の息子、叔母が津波にのまれて亡くなった。
斎藤さんはグループホームで介護福祉士として働いており、職場は水と電気が止まっていたものの、地震翌日から仕事をしていた。職場では家を流され被災した人もいるが、身内を亡くしたのは自分一人。周囲との震災に対する思いの温度差を感じることもある。
被災地を離れると、なおさらだ。年月とともに、震災の記憶の風化を感じる。「忘れてはいけない」。ランナー仲間が仙台に来た際には、南三陸町などを案内した。自身も神戸に来たときは必ず、メリケンパークの震災モニュメントを訪れるようにしている。
フルマラソンに出場するときは、いつも4人の写真を持って行く。中でも神戸マラソンは特別だ。「神戸は大震災を経験したまち。どうしても4人に見せたかった」と話す。
昨年の大会では、30キロに差し掛かった辺りで右足を痛めた。「完走は無理かも」とあきらめかけたとき、ランニングドクターに「歩いていきなさい」と声をかけられ、肩の力が抜けた。「4人が見守っていて、しんどいときに助け船を出してくれている気がした」とほほ笑む。
レースの最後には写真を握って一緒にゴールした。もちろん今年も、一緒にゴールの喜びを分かち合うつもりだ。(小尾絵生)