シニア
結婚してウン十年、子どもたちは家から巣立ち、再び夫婦水入らずの暮らしが始まる-。しかし、それを新婚のように楽しめる人ばかりではない。連れ合いに先立たれ、あるいは離婚して新たな伴侶と第2の人生に踏み出す人がいれば、家族に内緒で出会いを探す人もいる。人生経験を積み重ねた男と女が、パートナーに求めるものとは? シニア世代の恋愛事情、聞いてみました。
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きれいに手入れされた草花に囲まれて建つシンプルな一戸建て。招き入れてもらったリビングで大きな1枚板のテーブルにつくと、足元をトイプードルがすり抜けていった。
「この先も私とこの子たちだけで生活していくものだと思ってました」。犬を抱きかかえながら太田伸吾さん(63)が話し始めた。もう1匹の犬を手にするのは妻百合子さん(50)。「まさかね」と笑いながら顔を見合わせた。
互いに再婚。婚姻届を出したのは、伸吾さんの前妻の7回忌を終えた1年前だ。
前妻は難病の「黄色靱帯骨化症」を患い、病院の近くに引っ越した自宅で10年以上看病を続けた。地元で広告制作会社を経営しながら日に日に力を失っていく前妻を看病するのは身体的にも精神的にも楽ではなかった。
30年連れ添った前妻に先立たれたことは、自分が思っていた以上にダメージが大きく、自律神経が乱れて体に不調も現れた。
3年前、知人の強い勧めで百合子さんと出会った。互いに気負わず、自然と会話が続いた。
「周波数がぴったり合う感じ」
新しく立ち上げた大阪の支店を軌道に乗せるため、週末だけ帰宅する伸吾さんのもとに百合子さんが通う時期がしばらく続いた。そんな時間を過ごしているうちに、自律神経を整えるために飲んでいた薬も手放すほど体調が良くなっていった。
「出会う前までの自分には、前を向いて生きようというエネルギーが不足してたんだと思う。今は生きることにハリができた」
一方、百合子さんは33歳で離婚後、実家で暮らしてきた。両親や姉妹との関係は良好。めいっ子をかわいがり、自宅近くの会社に勤務していた。それで十分だった。「結婚しなくてもいいと思ってた。でも、他人でもこんなに合う人がいるんだなって」
過ごしてみてあらためて思う。「一番の味方でいてくれ、無条件でそばにいてくれるっていう安心感。それってとても大事やなって」
趣味は月1回のキャンピングカーでの「インドア外出」。「外に出て火をおこすのはめんどくさいから、中で過ごす」のだそう。伸吾さんが引退後は2人と2匹で全国を巡るのが楽しみだ。
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