新年度が始まり、お子さんも新しい環境に少しずつ慣れてこられたことと思います。一方で、保護者の方から「就学・進級に伴ってイライラが増えたり、これまでなかった友達とのトラブルが見られたりするのですが…」というご相談をいただくことがよくあります。
「5月病」という言葉もありますが、これらのストレスは体の不調をまねく原因にもなったりするため、早い段階で子どもがストレスや不安を抱えていることに気づいてあげる必要があります。また、発達特性のある子どもは、より「新しい環境に馴染みにくい」といった特徴があるため、大人のより細やかな気配りが必要となります。
そこで今回は、就学・進級時に見られるストレスが発生する理由(原因)2つと対応方法についてご紹介するとともに、発達特性のある子どもならではの理由および対応方法についてもご紹介します。
■ストレスや体の不調を招く原因と対応方法
①新しい環境に順応するのに、「大人が思っている以上に」時間がかかる
就学・進級時には、担任の先生や教室が変わる▽クラスのメンバーが変わる▽一日の流れが変わる▽今までなかった宿題が出るようになる▽家に帰ってからの流れも変わる…など、たくさんの変化があります。そのため、子どもにとっては「これまでのようにはいかなくなること」が増えます。やがて新しい環境に順応していくのですが、急激に変わるのみならず変化することが多すぎるため、大人が思っている以上に時間がかかるのです。
子ども自身も「早く慣れたい」と思えば思うほど、現実とのギャップに悩み、「上手くいかない」「(今までは上手くできていたことが)スムーズにできない」などのストレスが増えていきます。特に就学時には、幼稚園や保育園の頃とは違い、並行してこなさなければならないタスク(課題)が増えるため、一つずつタスク処理をしていくタイプの子どもの場合、脳の中が混乱し、ストレスにつながりやすくなってしまいます。
②保護者の不安が子どもの不安に繋がる
保護者の方も「我が子が新しい環境に馴染めるかな」という不安が高くなることで、いつもより声掛けが多くなったり、子どもへの質問も増えたりと、関わり方の変化が見られるようになります。そのため、敏感なタイプの子どもは保護者の不安を察知し、それが子ども自身のストレス(不安)になってしまうことがあります。
またそういった不安な気持ちを漠然と感じている場合は、子ども自身がその不安を言葉にすることは難しく、周りが気付かない間に緊張や不安が高まっていることがあります。年齢が小さな子どもの場合は、いつになったら新しい環境に慣れるのか見通しが持てないことに加え、「不安だ」というS0Sを適切に出すことが難しいこともあります。
これら2つの原因については、以下のような対応方法を心がけてみましょう。
・慣れるまでは時間がかかるものと割り切る
・新しい生活(新しいクラスなど)の様子について矢継早に質問しない
・親子で楽しい時間を過ごす
・保護者が自分の不安な気持ちを伝えることから始め、気持ちを表現する見本をみせていく
■自閉症スペクトラムなど発達特性のある子どもの場合
自閉症スペクトラムなどの発達特性がある子どもは、他の子どもに比べて特に「新しい環境に適応しづらい」といった問題を抱えていることが多くあります。それらの原因は一人ひとり違いますが、よく見られる理由3つと、大人ができる対応方法についてご紹介します。
①先の見通しが立てにくい
4月になると環境が変わることは普遍的なことですが、「環境が変わる」ということが予測できない子どもの場合、心の準備ができない(間に合わない)ことがあります。そのため、新年度を迎えると、「急に環境が変わった」と感じたり、先の見通しが立たないことで、ますます不安が高くなっていきます
【対応方法】次の行動を伝える
新しい環境に慣れるまでは、声掛けだけでなく、状況や実物を見せながら伝えていくと、次にする行動が理解しやすくなります。できれば、事前に環境が変わることを教えてあげると心の準備ができ、慣れるのが早くなります。次に何をするのかを理解でき、先生からも褒められる回数が増えることで、自信にも繋がるという効果も期待できます。
②自分のルールが決まっていて、環境の変化を受け入れることに戸惑いが大きい
自閉症スペクトラムの子どもは、マイルールを決めていることが多くあります。そのため、学校で決められたルールと自分のルールでは、「自分が決めたルールを優先したい」という気持ちを強く持っていることもあります。園や学校においては、自分の想いと違った場合、「ルールを守らない」という行動に出てしまうため、周りから「規則に従わない子だ」と誤解されることも多くあります。
【対応方法】子どもの決めているマイルールを理解する
子どもが決めているルールやルーティンはどんなことがあるか、保護者の方と先生間で共有することが大切です。学校や園にルールがあることを知らない場合もありますので、まずはルールをわかりやすく伝えてみましょう。その次に、子どものルールと学校や園のルールの折り合いがつけられる所を見つけていきましょう。マイルールの中で優先順位の低いものであれば、譲れる可能性も高いです。
③身体的疲労が精神的疲労に影響することがある
自閉症スペクトラムの子どもは、体の使い方が苦手などの特徴がある場合が多く、そのため普段からあまり運動をしたがらない傾向が強いです。運動機会が少ないため、体力や持久力が育ちにくく、そのため疲れやすいという課題があります。そのため、新しい環境で1日過ごすと(持久力が持たずに)他の子どもよりも早く疲労してしまうことがあります。身体的な疲労は精神的なストレスとも関係するため、身体的な疲労がイライラの原因などにもつながってしまいかねません。
【対応方法】普段から体を動かす習慣を持たせることで、持久力(体力)を育てる
一人で運動するよりも、保護者の方と一緒に体を動かす機会を持つことで、楽しく活動でき、より長い時間運動を行うことができます。持久力を鍛えるには、低負荷で長時間の運動が効果的と言われています。そのため激しいスポーツをさせるよりも、ウォーキングや、公園の遊具遊びなど、低負荷、かつ時間をかけて活動できるものを選択すると良いでしょう。
<まとめ>
・就学や進級時には、子どもにもストレスがかかり、イライラや体の不調を招くことがあります。
・ストレスとなる理由として①新しい環境に順応するのに、「大人が思っている以上に」時間がかかる、②保護者の不安が子どもの不安に繋がる、などがあります。
・発達特性のあるお子さんの場合、①先の見通しが立てにくい、②マイルールにこだわってしまう、③身体的な疲労が精神的なストレスの原因になることがあります。
・子どもの特性を理解した上で、スムーズに切り替えが行えるようにしたり、折り合いを見つけるなどの工夫が大切です。また持久力を高めるために、親子で運動遊びなどを行うのも効果的です。
◆西村 猛 幼児期の発達と発達障害が専門の理学療法士。発達支援の事業所を複数経営。子どもと姿勢研究所代表。全国各地の保育園で運動発達や発達支援に関する講義を実践中。YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、言語聴覚士の妻と二人で、言葉と体の発達や発達障害に関する情報を発信中。
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