兵庫運河 水面が育む憩いの空間

来年1月1日に開港150年目を迎える神戸港-。日本を代表する商港の源流は、平安時代に平清盛が日宋貿易のため修築した港「大輪田泊(おおわだのとまり)」(神戸市兵庫区)とされる。
やがて人と物資が行き交う西国の要衝「兵庫津(港)」として繁栄。明治期の近代化で港の機能が今の神戸港に移る中、兵庫津の活性化を目指して整備されたのが「兵庫運河」だ。
八尾善四郎ら地元の豪商や地主が中心となり、私財を投じるなどして1899(明治32)年に完成。日本最大級の水面積約34ヘクタールが強力な水運を可能にし、商いや暮らしを長く支えた。だが、完成から1世紀が過ぎ、物流や時代の変化で運河はその周辺も含め様変わりした。
運河をまたぐ橋の上に立つ。車やトラックが行き来し、水面の往来をはるかにしのぐ。週末や季節に応じ、水辺は町おこしのイベント会場にもなる。地域の財産として見直され、多くの人のアイデアで親水空間としての活用が進む。
変わらないのは豊かな水量と緩やかな流れか。風に舞う葉が水面に落ち、波紋がゆっくりと広がった。澄んだ空気に冬の足音を感じつつ、水辺を先へ。(映像写真部 風斗雅博)