借り上げ復興住宅 入居20年揺らぐ住まい

阪神・淡路大震災から23年。兵庫県内の自治体が都市再生機構(UR)や民間から借り上げ、賃貸で被災者向けに提供してきた「借り上げ復興住宅」が、20年の借り上げ期間を順次過ぎて、住民らが転居を迫られている。145団地のうち、2018年度は最多の60団地(入居約810世帯)で期限となり、被災者らは「ついのすみか」と住み続けた部屋で不安を抱えている。
県と神戸、西宮、尼崎、伊丹、宝塚市が最多時に7千戸超を提供。昨年12月~今年1月中旬時点で約2260世帯が暮らしている。
期限後の自治体の対応は分かれた。伊丹、宝塚市は全員継続入居としたが、神戸市は継続入居要件を「85歳以上」などと設定。県は年齢や健康、家族状況、地域とのつながりなど個別事情を考慮している。
神戸市と西宮市は、別の市営住宅予約で転居を猶予するなどするが、既に部屋を明け渡すよう計16世帯を提訴した。震災で家族を失い、病を患う住民もおり「入居手続きで明け渡しの必要性を説明されていない」と不満が募る。このうち神戸市の借り上げ復興住宅「キャナルタウンウェスト」(同市兵庫区)の女性(80)は、昨年10月の神戸地裁判決で退去を命じられた。
「どないして生きていったらええんやろ」とつぶやく女性。胃がんなどの病気や骨折に苦しみ、歩行器なしで歩けない。「なんとかこの部屋に慣れてきたから、動ける。私はただ『生きていける場所』がほしい」
控訴した女性らの弁護団は「高齢者の意に沿わぬ転居は転倒リスクが増し、命や健康が危ない」と懸念。神戸大在学時から住民らを支援する団体職員市川英恵さん(24)は「住まいは人権。住み続けられることが大事。その人らしく暮らすのに必要な生活の基盤だ」と語る。(記事・小林伸哉 撮影・大山伸一郎)