銭湯

昔ながらの銭湯が今、熱い。減少一途の厳しい状況だが、個性豊かな地域の財産を盛り上げようと、経営者、行政、利用者らが魅力普及に努める。
兵庫県公衆浴場業生活衛生同業組合によると、1960年代後半に県内で980軒以上の銭湯が営業。しかし、内(うち)風呂の普及などによる減少傾向に、阪神・淡路大震災が追い打ちをかけ、現在は9分の1にまで減った。
神戸市は昨年11月、地元銭湯39軒でつくる市浴場組合連合会と協力。入浴数に応じて景品が贈られるスタンプラリー「オフンロ巡り」を始めた。「御朱印帳」(台紙)を持って訪れる客の姿が目立つようになった。
淡路島の「扇(おうぎ)湯」(淡路市岩屋)では、昨夏にボイラーが故障した。廃業も覚悟したところに、銭湯ファンが支援を申し出た。浴場の修理や清掃を手伝い、月に4日、番台に座る。利用者数は右肩下がりだが「今はもう寂しくない。大切な仲間ができたから」とおかみの船橋富美子(ふみこ)さん(61)。
学生ら若者が多く集う「灘温泉水道筋店」(神戸市灘区)。週2、3回は訪れるという神戸大大学院生の井上勇作さん(23)は「湯船に漬かった瞬間、全身の力が抜けて息が漏れるんです」。友人と顔を見合わせ笑った。
「あー…」
人々の体と心を温める場所。今夜もまた一人、ふらりと「ゆ」の字をくぐる。
(映像写真部 風斗雅博)