地下利用 最前線

新たな“フロンティア”が足元に広がる。限られた土地を活用するため開発されてきた地下空間。さらなる活用に向け、これまでとは違う利用法の導入が進んでいる。
JR伊丹駅近くの本泉寺。境内の地下には「未来」的な光景が広がる。深さ約22メートルの円筒内に、レール状の鉄骨が無数に張り巡らされる。正体は、伊丹市が今春からオープンさせた「ハイテク立体駐輪場」だ。255台収容可能で、ICカードを入り口にかざせば、自動で出入庫ができる。
周辺は放置自転車が長年の課題だった。土地も限られていることから、地下深くまで掘った円筒型の駐輪場を採用。請け負った総合建設メーカーによると、都心部の駅前で導入する動きが加速しているという。
納骨堂も地下に建設する事例が目立つ。神戸市須磨区の浄徳寺は、地下に約400体分を安置する。市街地の一角で、墓地を造る土地はないが、地下は3千体まで収容可能。「郊外の墓より、近くて便利な所でお参りしたい」との檀家(だんか)らの声もあり、骨つぼは年々増えている。「高さ制限がある所は地下に増設することが多い。ニーズが後押ししている」と、一般社団法人全日本納骨堂協会(東京)の関係者は話す。
都市部では、野菜工場の開発も進む。加西市の物流搬送機器会社「伊東電機」によると、地下は年間通じて温度が一定で、空調の必要もなく省エネが可能。担当者は「頭上が大消費地。輸送コストも低減できる」と意気込む。
多様な活用が進む地下空間。地上とは違う「異世界」のはずが、時の世相を色濃く映していた。(映像写真部・中西大二)
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