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新建材「CLT」

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 木造の中高層ビルが可能に-。戦後に植林された大量のスギやヒノキが成熟し伐採期を迎える中、森林資源の活用につながる新建材「CLT(クロス・ラミネーテッド・ティンバー)」に注目が集まっている。板の繊維の向きが直角に交わるように重ねたパネルで、コンクリートに匹敵する強度を持ち、欧米では10階以上の住宅建設が進む。断熱性や耐震性に優れ、日本でも導入の動きが広がりつつある。

 中国山地のほぼ中央にある岡山県真庭市。地元の木材メーカー「銘建工業」が2年前に稼働させた日本初のCLT専用工場で、スギの板が加工されていく。これまで全国の約110の建物に使われた。

 「新しい価値観を提供できる建材」と中島浩一郎社長(65)。「軽くて強い。そして、持続可能な資源を使う時代の流れに合致している」と強調する。

 日本は国土の約7割が森林だが、輸入材の急増や林業従事者の高齢化で2000年代初め、木材自給率が2割を切った。木質バイオマス発電の増加などで回復傾向にあるが、3割台だ。木が茂りすぎて山が荒れると、土砂災害の危険が高まる。逆に、成熟した樹木の伐採が進めば若い木が育ち、自然環境の循環を促す。

 CLTは、曲がり材など建材に不向きな木も活用が可能。取引量が少ないためコストが課題だが、大手ゼネコンの竹中工務店は今春、川西市内にCLTで3階建ての研修施設を完成させた。現在、神戸市内でも5階建てビルを建設中だ。

 「荒れた森を再生する切り札となる可能性はある」と兵庫県立森林林業技術センターの戸田政宏所長(60)。そのために「森林資源の利用拡大を図る技術の開発と、何より、循環型の森を経営管理する人材育成が不可欠」と力を込める。(映像写真部・中西大二)

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