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(5)医療・保健との連携カギ 「自立」形作るケアマネジメント
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 「今度は老人ホームのショートステイを一カ月ほど利用してはどうでしょう」

 神戸・西神ニュータウンの西神第七仮設住宅の一室。この二十日、看護婦の黒田裕子さんは、痴ほう症の妻(76)を持つ橋本一さん(82)=仮名=にこう切り出した。

 黒田さんは、仮設支援のボランティア「阪神高齢者・障害者支援ネットワーク」の現場責任者を務める。長田で被災した橋本さんと出会ったのは昨年八月だ。

 妻は足が不自由で長い距離を歩けない。橋本さんは介護に疲れているように見えた。以来、週一回の訪問が始まった。入浴を手伝い、妻の外出用に車いすを借りる手配もした。デイサービスの回数も増やした。

 しかし、妻の痴ほう症状は進み、ぐちも出てきた。別途の方策が必要では、と考えた黒田さんが提案したのが、妻がホームに短期間入所するショートステイだった。「そうできるんやったら何よりや」と、橋本さんは笑顔を見せた。

 「一人ひとりが自立して生きられるよう、目標を立て、必要なサービスを考え、継続的に見守るケアマネジメントが必要です。中でも、ケアの評価、見直しはとても大切」と黒田さんは話した。

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 ケアマネジメントは、ケアマネジャーが他機関と連携しながら、要援護者のニーズの把握・診断、ケア目標の設定・ケアプランの作成、実行、評価、見直しを行う仕組みを指す。どんなケアを組み合わせていけば「自立」が可能になるのか、高齢者自身はわからないからだ。

 淡路島の五色町を訪ねた。同町は、公的介護保険導入を目指す厚生省が、兵庫県内で唯一、ケアマネジメントの実践先進地として調査対象にした自治体である。

 十七日夕、町健康福祉総合センターに、ホームヘルパー、訪問看護婦、保健婦、センター地域福祉係の担当者らが集まっていた。

 「Aさん宅を訪ねましたが、地域の助けがありサービスは必要なさそうです」「六月からBさん宅の訪問看護をやめヘルパー派遣にすればどうでしょうか」

 チームカンファレンスと呼ばれる情報交換は、約三十分間続いた。ケア継続中の家庭のほか、新しいケースも対象になる。

 医療・福祉・保健の実務責任者によるライフケアカンファレンスも別途、月一回開かれ、これらの結果は、ケアプランの作成、見直しに生かされる。

 同センターの新家昌子課長補佐は「一人のケアに複数の人が携わるようになり、『ばらばらにやっていてはだめだ』と連携の取り組みが始まった」と振り返り、「状況に応じたケアマネジメントには、医療・福祉・保健の十分な連携がポイント」と説明した。

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 黒田さんらの阪神高齢者・障害者支援ネットワークは、ケアマネジメントが必要と判断した二百世帯の訪問を続ける。

 震災前に必要な支援が届いていなかった人、震災後に新たに支援を必要としている人…。一日のスタッフは、看護婦とボランティアら約十人。朝と夕のミーティングで情報交換し対応を話し合う。

 最終的な判断は看護婦が行い、橋本さんのケースのように、ヘルパー派遣団体、福祉事務所、保健所や、医療機関や訪問看護ステーションにつないでいる。

 だが、医療・福祉・保健の連携も、ケアマネジメントの仕組みも、被災地ではまだごく一部でしかない。

1996/5/23
 

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