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(3)要望強い地域点在型サービス 市にはない整備の基準
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 「この地域に合った福祉施設がほしい」

 「下町の良さはいろいろなものが混然とあること。われわれは、そうした観点から施設の充実を求めている」

 四月十八日夜。神戸市長田区の「鷹取東復興まちづくり協議会」は、地域の公会堂で福祉部会を開いた。要望を受け、出席した神戸市の担当者を前に、住民の熱っぽい発言が続いた。

 鷹取東地区は震災前、九百七十世帯が暮らしていた。八万五千平方メートルのうち、九割近くを焼失、復興土地区画整理事業の対象になった。住民らは協議会に住宅、マンション、商業、権利、道路、福祉の六部会を設け、新しい街づくりを検討してきた。

 「今後、ますます高齢化が進む。復興の中に福祉をきちんと位置付けておかないと」。協議会副会長で福祉部会の部会長も務める谷口和市さん(65)は、街づくりと一体的に福祉を考えていこうとする住民の思いを語った。

 当初、検討していたのは特別養護老人ホームの建設だ。だが、それにはまとまった土地がいる。確保は難しく、今は小規模な福祉施設を復興住宅に分散配置する青写真を描いている。

 体の弱い高齢者らを昼間預かり、世話するデイサービスセンター▽在宅介護が困難になった寝たきり高齢者らを、一定期間預かるショートステイ施設▽気軽に集えるコミュニティーセンター…。安心して暮らせるそんな施設が身近にあれば、との願いである。

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 神戸市は、昨年七月につくった市民福祉復興プランで、在宅と施設、双方の福祉サービスの拡充をうたっている。

 市街地の復興住宅に特別養護老人ホームを併設する方式で建設ピッチを上げ、新設する特養には、デイサービスやショートステイなど在宅福祉サービスの機能も付加する。施設と在宅福祉の整備が、市街地を中心にセットで進む。

 だが、鷹取東地区が求めているような、徒歩圏内でサービスを受けられる「地域点在型」の考えはない。福祉部会で市の担当者は説明した。

 「デイサービスは各区に一カ所ある在宅福祉センターなどで実施している。地域の小規模な『地域型デイ』は、鷹取東と同じ小学校区内に既に一カ所ある。地域型デイの整備基準はないが、ここに作ると小学校区に重複する。しかし、こう言ってしまうと身もふたもないので、今、整備の基準を検討している」

 特養、在宅福祉センターといった「拠点方式」で福祉を進める市の基本的な整備方針。地域型デイはともかく、ショートステイを単独で行う計画はなく、そこには整備財源や、地域間の公平性の問題が絡んでくる。

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 住民はなおも求めた。

 「これまでの(市の施設整備の)考え方は分かるが、新たな街づくりの中でどう考えていくのか」

 「断る理由ではなく、可能となる知恵を出してほしい」

 震災前、地域に根付いていたコミュニティー。路地や長屋がはぐくんできた人間関係を、福祉施設の分散配置で復活させ、生かしたいと住民は思っている。

 市の担当者は話した。「いろいろ制約はあるが、できるだけ支援していきたい」。協議はまだ続く。

1996/5/21
 

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