阪神大震災からわずか二カ月後に行われた復興都市計画決定から十七日で二年。土地区画整理と市街地再開発事業の対象地域では、約九割で本格再建が始まっていない。事業進展には地域格差が広がり、一部では住民間の亀裂が深刻化している。受け入れをめぐって対立が深まり、まちづくり協議会が三分裂した神戸市東灘区、森南地区の現状を追った。
十六日午後、同地区の市現地相談所で、「森南町・本山中町まちづくり協議会」の総会が開かれた。
同会は震災直後に発足、住民の思いをありのまま伝えてほしいと会議を報道関係者に公開してきた。が、この日、初めて非公開にした。役員は「住民の意見を拾えば拾うほど、協議会としての方向性を定めにくくなる。協議に専念できる状況をつくりたい」と説明した。
同地区では、昨年十二月以降、分裂が相次ぎ、協議会が三つ併存している。分離独立した「森南一丁目」「同三丁目」の協議会は、事業の早期着工を目指す。「一丁目」は三月九日、臨時総会で住民案を採択して事業へと走り始めた。
もともとの協議会も市との意見交換会は継続しているが、「事業の白紙撤回」から「受け入れやむなし」まで意見は幅広い。「非公開」は、かじ取りの難しさを浮き彫りにした。
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分裂のきっかけは、昨年、神戸市が出した修正案に対する評価だった。
それまで、協議会は(1)道路は現状通り(2)交通広場は不必要(3)減歩ゼロ・の基本方針を打ち出し、事実上の事業撤回を求めてきた。強い反発を受けた市は、当初の十七メートル道路を棚上げにし、最大減歩率を一〇%以下から二・五%にするなどの修正案を示した。
案の諾否をめぐり、住民の結束は揺らいだ。
約千五百世帯の同地区では、九割の家屋が全半壊し、約三百戸が新たに建った。区画整理地域では、三階建て以上の建物を建てられないなど建築制限の網がかかり、「早く市と合意を」との声も強くなったからだ。
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この十日、独立した一丁目協議会が承認した住民案は、市に提出された。受け取った西尾力・森南地区調整担当課長は「五月の都市計画審議会に向け、都市計画変更の手続きを急ぎたい」と話す。
住民案は地区全体のうち、一丁目部分に限ったものだが、同様に住民案づくりを進める三丁目協議会会長の酒田登美雄さん(79)は「一丁目の決定は地区全体に影響する。私たちももともとのまち協も、無視できない。地区全体が協力してまちづくりに取り組む時だ」と意気込む。だが、事業に反対する住民には、事業がなし崩し的に進むことへの危ぐも深まっている。
「非公開」で行われたこの日の会議終了後、協議会役員は「分裂したという現状を踏まえて、市が考えている街づくりと、こちらが考える街づくりと、合意を目指して協議を続けていくことを確認し、賛同を得た」と説明した。
しかし、住民案づくりはこれからで、市との交渉や、三つの協議会の調整などは今後の課題として残されている。模索と混迷の二年は、被災地での住民合意の困難さを象徴している。
1997/3/17