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 被災者への支援は本来、保険制度の充実など抜本的な対策が必要だ。しかしそれがない今、復興基金は次善の策として意義がある。

 問題なのは、だれが、どういうシステムで事業を決めているのか、外から見えにくいことだ。

 基金でどういう事業をするのか、理事会が決めることになっている。が、実際には理事会の前に決まっているのではないか。例えば首長が選挙の際「基金を使ってやります」と公約したことがある。行政と別組織である以上、疑問が残る。

 また、兵庫県と神戸、西宮両市は理事会メンバーになっているが、他の被災市町の意見が反映されているのか懸念される。

 クリアでない点は、財源にもいえる。復興事業を紹介する配布物を見ても、それが国の予算を使っているのか、県か、それとも復興基金なのか。財源が明示されていないケースが多い。

 そこで生じるのが期限の問題だ。市民から見れば同じような復興メニューに見えても、基金の事業は長くても十年で打ち切られる。「これは基金ですから終わり」と言っても、市民は納得しにくいのではないか。どの財源を使っているのか明示して公表すべきだ。事業打ち切りの前に、早い段階で利用者に事業の終了を示すことも必要だろう。

 ただ、震災直後より、今こそ基金が必要な被災地の現状もある。市民に自立・自助を説く前に、やるべきことがあるのではないか。

 被災地のニーズは次々に変わり、硬直したメニューでは対応できない。より柔軟な姿勢が大事だ。議会の議決が必要ないため今もある意味では柔軟だが、国、自治省の前でもその柔軟性を発揮してきたか。また、県レベルで決まったことが市町の窓口で実施されるまで、半年もかかった例がある。迅速な対応が必要だ。

 事業内容で言えば、「何が必要か」ということと、「基金が使える範囲」がマッチしていない。効果の見えやすい分野が優先され、職業訓練などのように、必要とされても効果が分かりにくい事業は敬遠された。しかし、暮らしの再建は、効果が数字となって出ないことが多い。また、家賃補助では個別の対応に追われ、民間賃貸市場を考慮しなかった。一つの施策にもトータルな視点が必要だ。

 今後は、これまでの事業をきっちり記録として残してほしい。成功した事業だけでなく、うまくいかなかった例こそ役立つ。(談)

略歴

 こにし・やすお 一九四四年生まれ、京大農学部、オックスフォード大院卒。経営情報システム専攻。被災者復興支援会議座長を昨年三月まで務めた。

2000/5/17
 

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