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 被災者の住宅や生活再建を支援する「阪神・淡路大震災復興基金」が創設されて五年。「被災者自立支援金」の支給をはじめ、基金を財源にした事業は百十三にのぼる。三月までに三千億円以上が利用され、すでに計画事業費の八割を超えた。しかし、被災者には事業内容が分かりにくく、「何に使われたのか」「どう役立ったのか」との疑問はぬぐえない。支援金支給がヤマ場を越え、今後は事業の整理、さらなる見直しも求められる。十年の期限の折り返し点を迎えた基金を検証する。

 基金は一九九五年四月、兵庫県と神戸市の起債六千億円で創設され、二年後に三千億円が積み増しされた。金利変動の影響を受けない運用の仕組みで、生み出される総事業費は三千五百八十九億円。基金の九千億円は事業終了後、財団法人の同復興基金から県、市に返還される。

 当初は二十八事業でスタートしたが、その後百十三事業に拡大。うち、現在も申請を受け付けるのは五十七事業。三月までに使われた事業費(申請ベース)は三千八十億円で、計画の八六%に達した。

 最大の事業は「被災者自立支援金」の支給。三月で約十四万件、千三百六十八億円に達し、使われた事業費の四四%を占める。次に多いのが、民間賃貸住宅に入居した被災者の家賃補助。月三万円を限度に家主に渡す形で、三万一千戸に約二百八十億円が助成された。全体の九%を占める。

 また、利子補給を中心とした持ち家の再建・購入・補修の支援は、十四事業合わせて約五万五千件、五百十一億円。全体の一六%を占め、被災マンションを含めた持ち家再建支援も、中心的な事業となっている。

 仮設住宅に建設された「ふれあいセンター」、今年三月に閉鎖された「こころのケアセンター」、震災資料を展示する神戸・三宮の「フェニックスプラザ」などの運営費も、かなりは復興基金が財源。私立や外国人学校の再建支援など教育・文化対策にも支出されている。

 事業が細分化され、申請に多くの制限があることから、当初、被災者の間には「使いにくい」という不満が続出。利子補給など間接的支援の多さに「支援の実感がない」という声も上がった。明石海峡大橋のケーブル照明点灯といった観光対策などは、「復興基金で行う事業なのか」と疑問視する意見も出た。

 復興基金事務局は「行政の一般施策では行いにくいが、復興にぜひ必要な部分を基金が担ってきた。観光対策なども、被災地に人を呼ぶ仕掛けとして意味のある事業」と強調。「大規模な事業を新たに始める可能性は少ないが、進ちょくに合わせて内容はしっかり見直す」としている。

次善の策、多い課題/小西康生・神戸大経済経営研究所教授の話

 本来は、被災者を支援する抜本的な制度が必要だが、それがない今、復興基金は次善の制度として意義がある。しかし事業の決定過程の透明性に欠けていたり、支援すべき実態があるにもかかわらず、期限があるなど課題も多い。

<復興基金の主な事業>
2000年3月現在(申請額:億円)
被災者自立支援金1368
民間賃貸住宅の家賃補助280
緊急災害復旧資金利子補給(全半壊の事業所)242
住宅再建利子補給(持ち家)201
住宅購入利子補給132
コミュニティプラザの設置運営補助78
こころのケアセンター運営補助13
仮設住宅ふれあいセンター設置運営補助12
歴史的建造物の修理費補助10
観光対策推進事業補助
フェニックスプラザの運営

2000/5/17
 

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