連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

(上)再建支援 「阪神」の教訓今年こそ
  • 印刷

 言葉には、変わらぬ熱気があった。正面の報告者が語る。公的支援の拡充、不十分な復興…。

 十二日夜、神戸・三宮の市勤労会館で開かれた住民集会。作家でもある「市民=議員立法」実現推進本部の小田実代表は三年前、自らも設立にかかわった生活再建支援法の充実を訴え、「被災地の責務」を強調した。「被災して分かることがたくさんある。行政への市民参加の仕組みもその一つ」。弁護士や建築家らに続き、公的援助法実現ネットワークの中島絢子事務局長が締めくくった。「住宅は箱ではない。地域社会を含めたトータルな生活基盤。それを再生しなければ復興は終わらない」

    ◆

 大山の西側、鳥取県溝口町。昨年十月の鳥取県西部地震で自宅が全壊した農業、安達一孝さん(72)は、改修した牛小屋で新年を迎えた。だが、表情は明るい。自宅の跡地には一月下旬、2DKの新居が完成する。「思ったより早くできた。ありがたい」

 妻と二人暮らし。米や野菜は田や畑でとれるが、現金収入は年金などわずか。建築費約五百万円のうち、四百万円を県と町の助成でまかなえたからこその再建だった。

 町の圓山和紀助役は、助成に踏み切ったきっかけを「危機感」と表現する。

 「住宅を再建できない住民が町外へ流出すれば、消滅する集落が出る。それでは地域が衰退する」。そして国への批判も。「国レベルでの制度が必要だ」

 災害列島とも呼ばれる日本。昨年も自然の猛威が各地につめ痕を残した。有珠山や三宅島の噴火、東海豪雨…。その度に住宅再建などへの公的支援が課題になった。神戸新聞社が加盟する日本世論調査会の昨年末の調べでも「公的支援は必要」との回答が六一%。とはいえ、建物の被害額だけで約六兆円にのぼった阪神・淡路大震災などの巨大災害は、自治体の手に余る。

    ◆

 臨時国会が閉会した十二月一日、東京。超党派の「自然災害から国民を守る国会議員の会」総会で自民の原田昇左右会長は、同国会中を目指していた被災者住宅再建支援法の提案先送りを表明した。理由は「大蔵(現・財務)、自治(総務)省などの反発」。

 必要になる巨額の財源や、掛け金を固定資産税に上乗せする徴収方法が問題視された。議員の会でも、意見はまとまらなかった。

 国土庁の検討委員会はその三日後、住宅の公共性を認め、「公的支援は不可欠」との立場を打ち出した。画期的な方向転換だったが、具体策にはたどり着けなかった。

 神戸市の中祖実利さん(74)は、妻と須磨区の市営住宅に暮らす。区内にあった自宅は震災で全焼。年金生活で再建は難しく、昨年、土地も売った。「戦前から暮らしていた街。離れがたかったが、あきらめた」

 鳥取の再建助成のニュースを聞く度、複雑な思いがよぎる。「地域性が違うことは分かるが、阪神でもそんな制度があれば…」

 再建支援法の実現は、今年こそ・のテーマだ。

    ◆

 西日本は地震の活動期に入ったとされる。一時間に一〇〇ミリ超という、「防災の想定」を超える豪雨も近年目立ち、異常気象による被害に警鐘を鳴らす専門家も多い。阪神・淡路大震災から十七日で、六年。悲劇を繰り返さないため、教訓をどう生かし、発信するのか。直面する課題を追う。

2001/1/15
 

天気(9月8日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 40%

  • 33℃
  • ---℃
  • 50%

  • 34℃
  • ---℃
  • 20%

  • 34℃
  • ---℃
  • 40%

お知らせ