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(3)既存枠組み超えられず 室崎益輝・神戸大学教授
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 震災後の県政には「中途半端さ」が残る。

 一、二歩は前進しただろう。貝原知事は、復興に向けて努力したとは思う。しかし、知事が打ち出した施策は、国の「壁」を超えない範囲での仕組みづくりだった。国と大げんかをしても、百歩くらい前進しようとする思い切りはなかった。大震災の被災地のリーダーとして、既存の枠組みを乗り越えた発信をすべきだったと思う。

 「なぜ六千四百三十二人もの人が亡くなったのか」を考え、根本的に改めなければならないことがある。再び災害が起きれば、今度は県民の命を守ることができるのか。結果は変わらないのではないか。防災計画の被害想定を変えたり、災害対策センターを建設したりしただけでは、真に安全な社会にはならない。

 大規模プロジェクトを中心とする従来の発想を抜け出し、環境、人権、心の豊かさなどをトータルに考えた都市のあり方を考えるべきだ。そういう意味で、貝原知事の「基本路線」は震災後も変わらなかった。

 県に望まれるのは、市民の間で生まれた多様な「芽」の成長を、後押しする姿勢だ。現状は、県が前面に出過ぎだと思う。まちづくりの住民組織の活動が停滞していることに、もっと危機感を持ち、サポートすべきだろう。

 復興に「めど」はついていないし、知事の責任も果たせていない。本当の復興とは、新しい仕組みの地域社会をつくることだ。これは、被災地だけの問題ではない。新しい知事が何をすべきかを含め、今、一人ひとりがしっかりと震災後の総括をしておきたい。

2001/6/13
 

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