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(下)コミュニティー 広がる同胞の支援活動
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ベトナムの民族衣装アオザイを披露するガさん=神戸市長田区
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ベトナムの民族衣装アオザイを披露するガさん=神戸市長田区

ベトナムの民族衣装アオザイを披露するガさん=神戸市長田区

ベトナムの民族衣装アオザイを披露するガさん=神戸市長田区

 神戸市内の小学校。子どもたちを前に、ベトナム人女性が腕を組む。「日本ではどんな印象を与えますか」。「生意気!」「えらそう」。次々と声が上がる。「ベトナムでは、抵抗しないことを示す最も礼儀正しい姿です」。子どもたちの表情が驚きに変わった。

 ベトナム人の自助組織「NGOベトナムinKOBE」(同市長田区)は、小中学校や大学で、ベトナムと日本の文化の違いを伝えたり、ベトナム人の電話相談に乗ったりして自立を支援する。

 その活動のきっかけは、阪神・淡路大震災だった。

 避難所で、ベトナム人が自宅から持ち寄った肉や魚を焼いて食べていると、日本人から「どこのスーパーで盗んできたんや」と罵声(ばせい)を浴びせられた。日本語が不得手で、説明できない。誤解が解けないままだった。

 言葉の壁、偏見、ちょっとした生活習慣の違いが、誤解やいさかいにつながった。「日本人と一緒に暮らすには、ベトナム人を理解してもらわなければ」。代表のハ・ティ・タン・ガさん(43)は痛感した。

 震災後、別の組織で外国人の支援活動をしていたが、ベトナム人の自助組織として四年前に独立。社会からも徐々に認知されるようになり、病院から問診表のベトナム語への翻訳を頼まれたり、大阪や広島など遠方からの電話相談も増えた。

    ◆

 ここ数年、外国人自身がリーダーとなり、日本での自立支援や、日本人に自国への理解を広めるグループが生まれている。二〇〇一年設立の「関西ブラジル人コミュニティ(CBK)」(神戸市中央区)もその一つ。

 代表の日系ブラジル人の松原マリナさん(51)の元には、多くの相談が寄せられる。「ビザが切れてしまったがどうすればいいか」「会社でけがをした。どんな手続きをとればいいか」。正しい情報を伝え、解決すると信頼関係が生まれ、また相談してくる人も多い。

 こんなケースがあった。小中学生の子ども二人を連れ、ブラジルから来日した家族。学校の入学手続きがわからず、子どもたちは五カ月間、ずっと家にいた。CBKの存在を人づてに聞き、相談に。スタッフが教育委員会と連絡をとって手続きし、学校に通えるようになった。話をしようとしなかった子どもたちに、笑顔が戻った。

 慣れない国で、ともすれば孤立しがちな移住者。松原さんは「地道に自立を支援していけば、日本の社会になじんでいく。そして日本人にも、自分たちを理解してもらう。結局はそれが、災害時に孤立せず、共に暮らす一番の方法ではないか」という。

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 外国人とその暮らしを理解する。日本を理解してもらう。災害の備えには、そんな日常の積み重ねが欠かせない。

(佐藤由里)=おわり=

2005/1/26
 

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