兵庫県は今夏、三田、淡路市にある阪神・淡路大震災の災害復興公営住宅計二カ所に、高齢者の見守りやコミュニティーづくりを支援する活動拠点「高齢者自立支援ひろば」を開設した。今後、県内各地に広げていく予定。これまで高齢世帯生活援助員(SCS)が高齢者宅を訪問していた巡回型見守りを、社会福祉法人が常駐して高齢者を見守り、コミュニティーづくりも支援する事業へと発展させる。(網 麻子)
兵庫県や、ひろば設置を提言した県復興フォローアップ委員会、現場で活動するスタッフは、復興住宅以外にも通用する「高齢者の自立支援のモデル」をつくりたいという。
ひろばは、本年度から始まった事業。復興住宅に暮らす高齢者の(1)見守り(2)健康づくり(3)コミュニティー支援(4)支援者が情報交換する「プラットフォーム」の場-の四つの機能を持たせる。ひろばは、復興住宅のコミュニティープラザや空き室に設置。社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO法人)が運営する。二〇〇七年度末までに、八市、二十カ所に整備する。
事業費は、復興基金を財源にしており、一カ所あたり年間約七百万円。
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被災地からの転入者らが暮らす三田市の復興住宅「武庫が丘西高層住宅」(三百五戸)。ひろばは、近くのフラワータウン市民センターの一室にある。運営する同市社会福祉協議会職員の山八知子さんが週のうち四日間常駐する。見守りが必要な高齢世帯を巡回訪問。生活情報を盛り込んだ情報紙を定期発行し、支援者らを集めて「見守りネットワーク会議」を開く。
このひろばの特徴は、看護師らでつくる「高齢者支援センター」など二機関と同居していること。山八さんは、看護師や社会福祉士と情報交換したり、必要があれば住民に同センターを紹介したりしている。
同市社協地域福祉課の小前琢哉係長は「ひろばの開設前から、コミュニティー支援や、見守りネットワーク会議など情報交換の場づくりに取り組んできた。ひろばのスタッフが看護などの専門家と一緒にいる特色を生かし、三田市ならではのモデルをつくりたい」と話す。
現在、復興住宅自治会との連携が課題になっており、小前さんは「協力して高齢世帯を支援できるように、話し合いを続ける」という。
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一方、復興フォローアップ委員会も、ひろばのあり方について議論を続けている。三田、淡路のひろばを視察した委員からは「両市のひろばは、まだ始まったばかり」と前置きした上で、「例えば、コミュニティー支援で、住民同士や住民と地域を結ぶ事業が具体化されていないなど、四つの機能が十分、発揮されているとはいえない」との辛口の指摘も出た。
同委員会副座長を務める松原一郎・関西大教授(社会福祉学)は、個人による見守りの限界が見え、ひろばを考案したという。「ひろばを担う組織やスタッフは、人と人、人と団体、団体と団体を結びつける専門技術を身に付け、高齢者の生活を豊かにしてほしい」と注文する。
事業を進める県復興支援課の林敏一課長は「ひろばの進め方や人材は、現場の独自性を尊重したい。機能が十分、発揮できるように、県も運営にあたる社会福祉法人などを支援し、関係者が意見交換する場も設けたい」と話している。
2006/10/22