障害者や高齢者が住みよいまちづくりを目指す特定非営利活動法人(NPO法人)「ネットワークながた」。神戸市長田区の障害者作業所を中心に印刷会社や商店街など約五十団体が、昨年六月に設立した。
最初の事業は、「障害者自立支援法」に基づき、神戸市から委託を受けた障害者総合相談窓口の運営だ。
神戸市長田区川西通の二階建て建物一階に構えた事務所では、デスクの電話がひっきりなしに鳴る。「介護で苦労している。どうすればいいでしょうか」「福祉サービス事業所を紹介して」。寄せられる相談の応対に、スタッフが忙しい。相談窓口センター長の吉良和人(49)は、自身も脳性まひによる障害がある。
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NPO法人設立の原点は、あるバザーだった。
阪神・淡路大震災のあった一九九五年の十一月、神戸市長田区の障害者共働作業所「くららべーかりー」代表の石倉泰三(54)と妻の悦子(57)は、「震災を忘れない」との思いを込め、バザー「一七市(いちなないち)」を開いた。一七市は毎月続けた。
さらに九六年十一月、石倉と「長田ボランティアセンター・それいけネットワーク」の長谷部治(33)らが他の作業所にも呼び掛け、「一七市拡大版」を実現した。
がれきが残る空き地に、クッキーやパンなどを売るテントが並んだ。障害者が生き生きと働き、訪れた被災者でにぎわった。東京・小笠原からユニークな植物の葉が届き、北海道からは支援者が来た。石倉は「作業所が力を合わせればこんな大きなこともできるんや」と感じた。
拡大版は毎年開かれ、作業所だけでなく学校、地元企業も参加するようになった。そのつながりから、NPO法人は生まれた。
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同法人のメンバーは夢を語る。
相談窓口を担う吉良は「ネットワークながたを、災害時には障害者救援の拠点の一つにしたい」という。協力会員で会社役員の蔵野雅祥(39)は「うちで障害者を雇用したい。企業だからこそできる支援に取り組みたい」と話す。理事長を務める石倉は「事業を積み重ね、つながりをさらに広げたい」と意欲は衰えない。
障害者自立支援法の本格施行で、福祉サービスに一割の自己負担が導入されるなど障害者を取り巻く環境は激変した。それへの対応も課題だ。
大震災から間もなく十二年。石倉が一石を投じて始まった取り組みは、新たな一歩を踏み出そうとしている。
(敬称略)
(記事・網 麻子、写真・大山伸一郎)
=おわり=
2007/1/12