11歳の少年がサンゴの首飾りを女の子に贈ろうと考え、インド行きの帆船にもぐり込む。家に連れ戻され、叱られた少年は言った。「もうこれからは空想のなかでしか旅はしません」◆19世紀フランスの作家、ジュール・ヴェルヌの挿話として伝えられる。「月世界旅行」「海底二万里」などの空想小説で成功した彼はしかし、こうも言ったとか。「人が想像できることは必ず人が実現できる」◆現実としてかなえられた空想の旅、その最たるものが宇宙への旅だろう。きのう、野口聡一さんの乗った宇宙船が国際宇宙ステーションにドッキングした。映画の一場面を思わせるライブ映像にしばし見とれる◆米企業による新型宇宙船という。ハリウッドのデザイナーが手がけた宇宙服は細身でおしゃれだし、操作はタッチパネルというところもいつか見た漫画やアニメのよう。まずは旅の安寧と任務の成功を祈りたい◆野口さんが幼少期を過ごした兵庫県太子町では、母校の小学6年生らが打ち上げ中継を見守った。55歳で3度目の夢飛行をなしえた大先輩の勇姿はいつまでもみなの胸で輝きつづけよう。がんばって、野口さん◆宇宙船に付けられた名「レジリエンス」(回復力)を今はコロナ禍にある地球の未来に重ね、エールを送る。2020・11・18
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