スペイン語のような響きを覚える。〈アンドルマ、ミロマカー、アンナコトシテケツカル〉。1964年の東京五輪を前に、沸き立つ首都を取材した開高健さんの「ずばり東京」に出てくる◆隅田川を渡る佃島(つくだじま)渡船場の60代の船長が話す地元の言葉で、意味は「あいつ見てみろ、あんなことしているぞ」。〈ケツカル〉といえば、確か田辺聖子さんが「大阪弁ちゃらんぽらん」で悪たれ口の一つに挙げていたが◆佃島は摂津国の佃村の漁師たちが徳川家康に請われて移り住んだ場所。だから佃言葉と呼ばれる方言のベースは大阪弁だ。その漁師たちが保存食として小魚を加工したのが「つくだ煮」の始まり、とモノの本に書いてあった◆昨日29日、朝刊連載「今日は何の日?」に目をやると「つくだ煮の日」だった。佃島の守り神、住吉神社が建立された日にちなんで業界団体が制定した◆神戸の商店街の店主に聞くと、夏はつくだ煮のシーズンだとか。「塩っ気があって昆布などにはミネラルがたっぷり。猛暑を乗り切る食品です」。なるほど◆連載写真は、つくだ煮の商品「アラ!」をもじった「アレ!」。プロ野球阪神の優勝を願って発売された。「アラ!」「アレ!」、そして優勝へ「オーレ!」。こちらはずばり、スペイン語。2023・6・30
