「日本一短い手紙」から、福井県の小学生が書いた作品を引く。〈学校までの地図かくと/色えんぴつの緑だけへる/他(ほか)の色もぬりたいよ〉。家の周りも登下校の道も、山に囲まれて緑がいっぱい。それはそれでいいんだけれど。口をとがらせる表情を思い浮かべる◆この子はどんな絵を描いただろう。来春、小学校に行くはずだった男の子。神戸市内でも西の方に家があり、近くは緑にあふれて虫もいっぱい。でも、もう色鉛筆は握れない◆神戸で6歳の男児が遺体で発見された。体のあざから暴行を受け命を落とした可能性が高いという。草むらのスーツケースの中で見つかったと聞き、言葉を失う◆祖母、母、叔父、叔母。普通ならみんなにかわいがられて育つ家族環境である。それが、あざができるほど…。しかも母や叔父たちは祖母への監禁などの容疑で逮捕されている。いったい何が◆母親は揺れながらも何度かSOSを出した。保育園はあざを見つけて児童相談所に通報、児相も家庭訪問に動く。それでも惨事は防げなかった◆ただでさえ幼子の命は危うい。〈朝に見て昼には呼びて夜は触れ確かめをらねば子は消ゆるもの〉(河野裕子)。社会がしっかり親心を持たねば小さな命を救えない現実を、また突きつけられる。2023・6・27
