2023/06/24
沖縄童謡集に収められた歌の一節という。「はっくい、べー（隠れろ、早く）」。今年３月に亡くなった作家の大江健三郎さんが著書「沖縄ノート」に収める◆子どもたちがカラスに声を掛ける。「大和人（やまとんちゅ）の、鉄砲担（かた）めて汝射（やーりー）りが、来（ち）うんどー」。日本人が鉄砲を抱えてやって来るぞ、早く隠れろ。歌いながら子どもたちはカラスに自らを重ね合わせている、と大江さんは説く◆鉄砲どころか、ミサイルや弾薬を抱えた自衛隊が今、沖縄を含む南西諸島に乗り込んでいる。那覇市ではこの１月、ミサイルの飛来を想定した初の避難訓練があった。中国の軍事力が台頭している、という政府の主張とともに◆昨日、沖縄は「慰霊の日」を迎えた。７８年前の沖縄戦では県民の４人に１人が命を落とした。「戦争を始めるのは権力者だが犠牲になるのはいつも住民」「軍隊は守ってくれない」。生存者の言葉を語り継いできた人々の目に今の時代はどう映るだろう◆追悼式で朗読された「平和の詩（し）」は問いかける。〈平和は不確かで 脆（もろ）く崩れやすい〉。今こそ戦争の犠牲になった沖縄から世界へ届けたい。〈平和を創（つく）り 守っていく この沖縄の「チムグクル（真心）」を〉◆もう二度と戦場にしません。誓うことが、沖縄へのチムグクル。２０２３・６・２４
