傭兵(ようへい)は、世界最古の職業のひとつに位置付けられることがある。真偽ははっきりしないが、争いの絶えない人類史を俯瞰(ふかん)すれば、深い絶望とともに、さもありなん、という気持ちになる◆顧客は「国家」、社員の派遣先は「戦場」-。平和な社会に生きる者には想像しにくいが、ロシアが侵攻したウクライナでは当初から「民間軍事会社」なるものが最前線で戦闘行為をしていると伝えられていた◆刑務所で数万人を勧誘し、半年の“軍役”を終えれば自由の身になる。ドンバスなどの激戦地で囚人兵を人命無視の突撃部隊に投入している…。各国の報道機関が伝える内容を、ロシア国民はどう受け止めていたのだろう。あるいは伝わっていないのか◆その民間軍事会社「ワグネル」を率いていたプリゴジン氏の武装反乱は失敗に終わったようだ。ただ、火だねは消えていまい◆傭兵の歴史は古いが、民間の軍事会社は1990年代に台頭し、米国の対テロ戦争で急成長した。推計で数十兆円規模の巨大ビジネスというから驚く◆戦争の民営化、軍事力のアウトソーシング(外注)である。厭戦(えんせん)ムードの世論の目をそらすのに好都合らしいが、その陰で莫大(ばくだい)な利益にほくそ笑む人間がいる。こんな民間委託を一体だれが望んだというのか。2023・6・28
