兵庫県西脇市、加西市、加東市、多可町で構成する「北はりま消防組合」が、各市町が拠出する運営費の分担で揺れている。組合内の不公平感を示す加東市が見直しを求めているものの、合意形成に至っていない。人口増で負担が増える同市は、組合からの脱退も視野に入れ、分担金の割合や体制の再考を要請している。（中西大二）

　「脱退も選択肢の一つ」

　昨年１２月の加東市議会。北はりま消防組合の分担金に疑問を持つ市議の質問に、安田正義市長はそう答えた。

　現在、組合運営費の８割は、各市町の人口で決定される。４万人を超える加西、加東の負担割合は高くなる。西脇は当初、加東よりも高かったが、人口減に伴い、現在は加東が上回っている。２万人を切る多可町も割合は低い。構成市町で唯一、人口が微増傾向の加東市は分担金が増加する一方、市管内の拠点や人員に大きな変化はなく、安田市長は「強い負担感や不公平感を抱く」とする。

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　同組合は２０１１年４月、にしたか（西脇市、多可町）、加西市、加東市の旧３消防本部が統合して発足した。分担金ルールは１４年、北播磨の他の広域組合を例に導入され、人口割りは５年に１度の国勢調査を基に決定される。加東市の人口は１５年から２０年で３３５人増加した一方、西脇市は約２２００人減、多可町は約１９００人減少した。このため、３市１町に占める加東市の人口割合は約１・３％増。結果的に分担額が増え、２１年度当初予算では２３７０万円増を計上した。

　加西市も５年間で人口が約１６００人減少したが、構成市町で最も人口が多いため、人口割合は微増になっているという。

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　広域化の利点を生かすため、消防署などの拠点を１０カ所から８カ所（各市町２カ所）にスリム化することが一時検討されたという。だが、現在も１０拠点（指令センター除く）は維持されている。管轄面積が構成市町の中で最も大きく、３拠点を維持する多可町の担当者は「管轄エリアは地形上、縦に長く、２拠点ではカバーしにくい」と説明する。加西市も組合発足前と同様、３拠点から変わりない。

　人員確保のための費用も増え、加東市の担当者は「加東は２拠点で変わらず、人員が充実されたわけではない」と漏らす。仮に組合を脱退し、加東市単独の消防本部を設置する場合、５～６億円の設備予算に加え、年間予算は６千万円増を試算する。だが、市は「現状よりも人員配置面で消防力の増強につながる」との姿勢も見せる。

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　今月下旬、構成市町の首長や防災担当者らが集まり、管理者会が開かれた。その席で加東市の安田市長は、運営費の負担割合や体制の見直しなどを要請し、議会での「脱退発言」についても説明したという。神戸新聞社の取材に組合管理者の片山象三・西脇市長は「管理者会は非公開。コメントすることはできない」とした。

　加西市は「全国的に広域化が進む中、逆行は望ましくないと考える。構成する自治体の利害が一致するよう、しっかりと議論した上で、合意を図りたい」とし、加東市の安田市長は「加東のことだけを考えて議論を呼び掛けたのではない。再び管理者会を開くなどし、新たな考え方を示してほしい」と求めている。