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3年間かけて髪を伸ばした丸山奏亮君=多可町(同町提供)
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3年間かけて髪を伸ばした丸山奏亮君=多可町(同町提供)
父親がはさみを入れる=多可町(同町提供)
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父親がはさみを入れる=多可町(同町提供)
切ったばかりの髪を寄付する丸山奏亮君=多可町中区天田(同町提供)
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切ったばかりの髪を寄付する丸山奏亮君=多可町中区天田(同町提供)

 医療用ウィッグ(かつら)を作るため、伸ばした髪の毛を提供する「ヘアドネーション」に兵庫県多可町の小学3年生、丸山奏亮(そうすけ)君(9)が挑戦し、頭髪約31センチを寄付した。大好きだった親戚の女性ががんと診断されたのをきっかけに、小学校入学から3年かけて髪を伸ばした。不思議に思っていた同級生も徐々に受け入れてくれたといい、「小学生のうちにもう一度」と再挑戦を目指している。(伊田雄馬)

 奏亮君は幼い頃から、母のいとこにかわいがられてきた。その人が3年前、乳がんと診断されてショックを受けた。「自分にできることは」と考え、母から教えてもらったヘアドネーションに挑戦することを決めた。

 「続けられるの?」という両親の心配をよそに、奏亮君は淡々と髪を伸ばし続けた。夏は暑く、風呂で髪を洗うと手がくたくたに疲れた。物珍しげな同級生から「女の子みたい」とはやし立てられ、腹を立てた時もあったが、「やめたい」と言ったことは一度もなかった。

 2、3年生になると徐々に周囲も慣れてきた。クラスの女子は体育の授業の後、乱れた髪を結び直してくれた。男子も髪を触り、「気持ちいいね」と褒めてくれるように。楽しそうな様子に、父親(31)は「みんなで伸ばした髪だ」と心を動かされていたという。

 2月中旬、多可町中区の美容室で髪を切った。細かく束ねた髪に最初は奏亮君、次に両親と、順番にはさみを入れていった。もう街中で「お嬢ちゃん」と呼ばれることはないし、風になびいた髪が口に入ることもない-。達成感を感じながらも、「愛着が湧いたので、ちょっとさみしい」と口にした。

 髪は地元の中ライオンズクラブを通じて寄付され、奏亮君は記念の賞状を受け取った。切った長さは、ドネーションに参加できる下限の31センチ。もう10センチほど切れたが、「小学生の間にもう一度、寄付したい」と最低限にとどめた。

 母親のいとこは昨年6月にこの世を去り、髪を使ってもらうことはできなかった。それでも「みんなを幸せにする」と奏亮君。首元で切りそろえたつややかな髪を揺らし、迷いのない瞳を輝かせた。

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