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災害時に聴覚障害者が直面する悩みを伝える防災士の片岡幸壱さん=神戸市東灘区
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災害時に聴覚障害者が直面する悩みを伝える防災士の片岡幸壱さん=神戸市東灘区
防災士の榊原道真さん。点字や音声で、目が不自由な人に危険箇所を伝える=明石市
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防災士の榊原道真さん。点字や音声で、目が不自由な人に危険箇所を伝える=明石市
障害者の防災をテーマにした国際フォーラムで発言する片岡さん(右から2人目)=2018年10月、淡路市(本人提供)
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障害者の防災をテーマにした国際フォーラムで発言する片岡さん(右から2人目)=2018年10月、淡路市(本人提供)

 阪神・淡路大震災をきっかけに、防災の知識や技能を持つ人材を養成しようと創設された民間資格「防災士」。行政職員や自主防災組織のメンバーらに交じり、障害者が活動するケースが出ている。災害時に支援が必要な「要配慮者」の立場から、多様な心身のハンディへの対応を伝えている。(佐藤健介)

 「災害時に耳が不自由な人に出会ったら、筆談や手話、ジェスチャーを使ったり、大きな声で話したりしてほしい」

 聴覚障害者の会社員、片岡幸壱(こういち)さん(40)=神戸市東灘区=は2004年に防災士となって以来、高校の福祉授業や、地域でのワークショップなどでそう呼び掛けてきた。

 両耳には3歳から補聴器をつけている。右耳は聞こえるが、左耳は全く聞こえない。手話は使えず、相手の口を見て言葉を読み取り、筆談やジェスチャーでコミュニケーションを取る。

 中学生の時に震災に遭い、自宅が全壊。ガス漏れの異臭が漂い、家が傾く恐怖の中、机の補聴器が寝床の手元に飛んできた。「生き延びろ!」と運命的なものを感じた。同級生や近所の人が亡くなり、「地震から命を守るすべを考えたい」と、防災士になった。

 被災体験の講演に加え、防災の専門紙に記事を執筆。ユニバーサルデザイン(UD)を教える学校の授業をサポートしたり、災害関連の学会に参加したりと活動は多彩だ。「避難所のUD」をテーマにしたワークショップでは、必要事項を板書する▽できること、できないことを周囲に知らせる-などのアイデアを共有した。

 「被災地や避難所には、多様なハンディを持った人がいる。どう情報を伝えるか、日頃から話し合っておくのが重要」と強調する。

     ◆

 はりきゅう・マッサージの治療室を営む榊原道真(みちまさ)さん(68)=同市西区=は20年3月に兵庫県内の全盲者で初めて防災士になった。

 40代の頃、進行性の難病「網膜色素変性症」と診断された。患者の知人に震災での避難所体験を聞き、05年から視覚障害者らが災害時に望む支援を学ぶワークショップを企画してきた。

 「避難所へ移動するときのサポート体制がない」「一度覚えた避難所のレイアウトを変えられると分からなくなる」「手のひらに文字を書くなど、簡単なサインを決めておく」といった意見をまとめた冊子も作った。

 防災士への挑戦を決意したのは「目の見える人には分からない困りごとを発信したい」と思ったからだ。19年から県の防災士養成講座を受講。パソコンの読み上げシステムを駆使し、教科書の内容を頭にたたき込んだ。資格試験は代筆と代読で臨み、合格した。

 防災士となって取り組んだのは、自治体ハザードマップの周知だ。自ら代表を務める視覚障害者団体の会員が住む市町に、土砂災害警戒区域や南海トラフ巨大地震の浸水想定地域などを電話で聞き取り、活字に起こしてテキストデータを作成。メールの音声機能などで会員に届けている。

 健常者の防災士や学生にも講演。「避難所で案内する際、肘や肩にそっと触れ、ゆっくり誘導すれば安心」と助言している。

 「要配慮者と支援者が交流する場が大切。地域全体の課題である防災を入り口に、日常生活の支援にもつなげたい」と語る。

【防災士】日本防災士機構が2003年に創設。認証機関による研修講座の受講や、資格試験の合格、自治体や消防署が行う救急救命講習の参加実績がいる。21年12月末現在、全国で約21万9千人が登録されている。

■被災した障害者の声、支援に不可欠

 災害で障害者が直面する課題は、避難に時間がかかる▽防災無線やアナウンスが聞こえない▽避難所での不安やストレスに弱い-などがある。当事者による発信が欠かせず、日本防災士機構(東京)は「障害者自身が積極的に防災に関心を持つのは意義深い」と指摘する。

 同機構によると、資格取得に障害の有無は問わないため、視覚、聴覚、四肢、知的などの区分でいずれも防災士はいる。ただ、正確な人数は把握していないという。

 同機構は試験の説明時に手話を認めたり、試験官と一対一の口頭試験を実施したりして対応。担当者は「障害のある防災士が増えれば、自力避難が難しい人の名簿づくりや避難支援計画の作成がスムーズになる」と期待する。

【特集ページ】阪神・淡路大震災

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