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沖縄都市モノレールの駅から見えるよう、琉球銀行の敷地内に設置された復帰50年記念の横断幕=那覇市
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沖縄都市モノレールの駅から見えるよう、琉球銀行の敷地内に設置された復帰50年記念の横断幕=那覇市
ドルと円を交換するため、琉球銀行の前に並ぶ人たち=1971年撮影、沖縄県公文書館所蔵
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ドルと円を交換するため、琉球銀行の前に並ぶ人たち=1971年撮影、沖縄県公文書館所蔵
新城和博さん
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新城和博さん
ボーダーインクの事務所の棚。沖縄にまつわる多種多様な本や資料で埋まる=那覇市
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ボーダーインクの事務所の棚。沖縄にまつわる多種多様な本や資料で埋まる=那覇市
神戸新聞NEXT
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 「うねり」と「不発弾」、そして「うちあたい」。沖縄県は15日、日本復帰から50年を迎えますが、その実相を知る手がかりとして、編集者の新城和博さんが口にした言葉です。那覇市の出版社「ボーダーインク」の創設に関わり、地域に根ざした数々の本を編んで30年余り。その経験から紡がれた言葉の真意を、本を介して探りたい。

    ◇    ◇

■出版社「ボーダーインク」編集者 新城和博さん 

 復帰を経験していない世代が編者を務めた「つながる沖縄近現代史」(前田勇樹、古波藏契(こはぐらけい)、秋山道宏編著・ボーダーインク)からいきますか。若手研究者3人が現代の沖縄社会の課題に向き合う上で必須のテーマを選び、最新の研究成果を踏まえ、時の流れに沿って解説した沖縄近現代史の入門書です。19世紀末のいわゆる「琉球処分」から、日本への同化教育、沖縄戦を経て、現在までの約140年。年表的な知識じゃなくて、なんで今、沖縄がこうなっているのか知りたい、という声に応えているからでしょう。昨年末の刊行以来、県内外の特に20~30代から好評で、版を重ねています。

 25人が執筆し、僕も編集に関わったんですが、復帰運動を平成生まれの編者が見つめ直したことで新たな視点が示された。保守・革新勢力が県内への新基地反対で結集した「オール沖縄」などの現象は、突発的に出現したんじゃなくて、長年にわたる「うねり」の一環なんだと実感した。波が大きい時も、静かな時もあるけれど、常にうねりは存在している。単独の選挙結果だけを見て沖縄の民意を論評する報道が目立ちますが、一連の経緯も踏まえた上で、先を見つめる必要があると思います。

 編者らはユーチューブの「沖縄歴史倶楽部(くらぶ)チャンネル」でも積極的に発信している。社会とのつながりを強く意識しています。

 関連して、自著ですが「増補改訂 ぼくの沖縄〈復帰後〉史プラス」(ボーダーインク)を。僕は米国統治下の1963年、那覇市に生まれ、小学4年で復帰を迎えた。そこから現在までの沖縄の印象的な出来事を、個人的な体験と重ねてつづったものです。具志堅用高、326日にわたった断水、「慰霊の日」休日廃止問題、在日米軍による事件事故、安室奈美恵、ドラマ「ちゅらさん」など、硬軟織り交ぜて。ありがたいことに昨年、「この沖縄本がスゴい!」を受賞しました。

 学生の頃に読んで感動して、ずっと手元に置いているのが、船越義彰(ぎしょう)さんの「きじむなあ物語」(那覇出版社)。船越さんはずっと沖縄在住で、詩や小説、戯曲など幅広く活躍された。キジムナー(木の精)が沖縄戦に巻き込まれていく叙事詩は切なくて、でもあたたかくて面白い一冊です。

 池上永一さんの「ヒストリア」(KADOKAWA)も、もっと読まれてほしい。沖縄戦でマブイ(魂)を落とした少女がボリビアへ渡って奮闘する長編小説ですが、チェ・ゲバラは登場するわ、独特の、時にやり過ぎとも言われる作風がよく出ている。山田風太郎賞受賞作です。

 重要な役割を果たすのが爆弾というモチーフ。自分の中では、爆撃の描写と沖縄に残された膨大な不発弾がリンクしてしまう。復帰当時、全て処理するのに50年はかかると言われ、半世紀が過ぎてなお、いつまでかかるか分からないという。異常な状況なのに、毎週のように各地で処理が行われ、通行止めを知らせる看板を見ても反応しなくなっている。それが沖縄の一つの日常なんです。

■復帰は「沖縄」の問題か

 沖縄には出版社が多く、さまざまな本が出されていますが、ニーズが高いのは実用書です。ボーダーインクも90年の設立以来、約500点を刊行してきて、不動の1位は年中行事や祭祀(さいし)の手順を紹介する「よくわかる御願(ウグヮン)ハンドブック」。10万部を超えてます。

 近現代史の本も、必要に迫られた実用書として購入されているんじゃないかと思います。背景には、沖縄とは、自分たちはいったい何なのか-と絶えず揺れ動いてきた歴史がある。今年発表された琉球新報社の世論調査で、沖縄の近現代の重要な出来事は何かという設問に対し、「沖縄戦」「復帰」のほか、明治期の「琉球処分」が9位に入っていた。琉球王国がなくなるという揺らぎ、沖縄戦での命の揺らぎ、そして復帰では施政権が揺れ動いた。住民の中では、これらの出来事は連続していて、先に言った「うねり」に結び付いている。そう感じます。

 復帰の話題がこれほどクローズアップされるのは、首里城の正殿などが開園した復帰20年(1992年)以来じゃないかな。その後は沖縄ブームもあったけれど、基地問題は混迷し、10年前は(墜落事故が多発していた輸送機)オスプレイの県内配備が強行され、とてもじゃないけど祝賀感はなかった。今年は50年、半世紀という数字のマジックもあって記念行事は増えているけど、コロナ禍やウクライナ侵攻もある中で、盛り上がってるかというと…。

 復帰当時に切望していた所得格差はある程度改善され、インフラ整備、観光客の増加、日本を席巻するようなアーティストが出るとか、いろいろ願いはかなっている。でも、根源的に、何か違う。沖縄に米軍基地があり続け、対峙(たいじ)せざるを得ない。日米関係に伴う負担をひとり抱え込まされている。不発弾はその象徴です。50年、バンザーイとはならないですよ。

 僕の母は戦中、渡嘉敷(とかしき)島の集団自決で生き残り、父も慶留間(げるま)島で捕虜になったのです。そして今なお、市民生活のすぐそばに広大な基地が残る。またここが戦場になるんじゃないか。そんな不安が、常に心のどこかにあります。

 沖縄の復帰について、日本にとって何だったのかと自問することなく、あくまで沖縄の問題として説明を求める。今日までそれが繰り返されてきた。自分に引き寄せて痛みを感じる、こちらの言葉で言うと「うちあたい」しているだろうか。そう問い返したいです。

(聞き手・新開真理)

【しんじょう・かずひろ】1963年那覇市生まれ。サブカルチャー的な視点で沖縄社会を読み解いた共著「おきなわキーワードコラムブック」(89年)で注目され、コラムや書評なども手掛ける。

〈好きなウチナーグチ(沖縄の言葉)〉うちあたい

 第三者のことなのに、心当たりがあり、ウッと痛みを覚えて反省する、と訳せばいいか…。自分がものを書く時の根っこに、これがあるのかもしれません。

■もっと深く知りたいときに

「南米レストランの料理人 海を越えて沖縄へ 日系家族のかたいつながり」(漢那朝子著・ボーダーインク)

南米移民の子孫で沖縄に移り住んだ人々の歩みを、料理を通じてつづる

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「わたぶんぶん わたしの『料理沖縄物語』」(与那原恵著・西田書店)

「おなかいっぱい」を意味するタイトルのエッセー集。今春、講談社文庫も

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「南島風土記」(東恩納寛惇著・沖縄郷土文化研究会)

歴史学者が戦前にまとめた沖縄の地名辞典。街歩きのお供

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「なはをんな一代記」(金城芳子著・沖縄タイムス社など)

朝ドラになりそうな波乱の半生記。ハマりました

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