6月、兵庫県加東市の岩崎圭吾さん(68)は、自宅の給湯器を最新の省エネ型に買い替えた。
電気とガスを併用し、必要な時間に必要な量の湯が自動的に沸く。光熱費を抑え、二酸化炭素(CO2)排出量は一般的なLPガス給湯器よりも最大53%削減する。「身近で無理をせず、少しでも地球の役に立てれば」と岩崎さんは話す。
この機器を製造・販売するのは給湯器大手のノーリツ(神戸市中央区)だ。腹巻知(さとし)社長は「燃焼機器を扱う会社として、環境との共生は必須」と話す。
脱炭素社会実現に向け、企業は製造過程のみならず、その製品が使われる間に排出されるCO2の削減も求められている。同社のCO2排出量約1834万トン(2020年)は全国の1・6%に相当し、その96%が製品使用での排出だ。ここをいかに抑えるかが、将来の事業環境を左右する。
国が50年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)を打ち出す中、製鉄や自動車など大量のCO2を排出する分野への目線は厳しく、給湯器メーカーも同様だ。同社は事業活動の全電力を再生可能エネルギーで賄う国際的枠組み「RE100」にも加盟し、今年2月、「50年にCO2排出ゼロ」を掲げた。
給湯器の燃料もガスから電気、さらに水素やメタンへと技術開発が進む。50年を見据え、今後8年間で計700億円を投じ、どの燃料が台頭しても対応できる機器開発などを急ぐ。
□
スポーツ用品大手のアシックス(神戸市中央区)は1990年代から、省エネや環境に優しい素材開発を進めてきた。売上高は海外が8割を占め、特に重視する欧州市場は脱炭素化の要請を強める。
さらに、地球温暖化はスポーツにも影響を及ぼす。19年、酷暑の中東ドーハで開かれた女子マラソンで、4割以上の選手が棄権した。同社の吉川美奈子サステナビリティ統括部長は「今、脱炭素に踏み込まないと、地球環境の面でも、市場でもやっていけない」と危機感をあらわにする。
同社は製品のサプライチェーン(供給網)を担う世界の主要委託先工場などに、30年のCO2排出の15年比63%削減を求める。特に排出の7割を占める原材料や製造過程で、リサイクル材の採用などの資源循環と機能性の両立に挑む。
生き残りをかけて脱炭素化を進める大企業。その流れは、中小企業にもいや応なく押し寄せている。(横田良平)
■環境投資揺れる中小企業■
溶かしたアルミニウムが金型に流し込まれ、次々に成型される。熱気が立ち込める設備に専用の温度計をかざすと、200~300度と表示された。
「ここから逃げる熱を利用できればいいですね」「変圧器の更新、統合も省エネになりますよ」
6月下旬。自動車部品メーカー、嶋本ダイカスト(神戸市西区)の鋳造工場で、省エネの専門員2人がプレス機などの稼働状況を点検して回った。
一般財団法人省エネルギーセンター(東京)が中小企業向けに行う省エネ最適化診断。機器の使い方や電気・ガスの使用量などを測り、改善策をまとめる。
「頭にはあったが、何をすればいいか分からなかった」と島本一成社長(65)。最近、取引先から脱炭素の取り組みを聞かれ始めたといい、今回、日本政策金融公庫などの融資を受けるために受診した。
アップルなど欧米の大企業は取引先にも脱炭素を求めるようになり、「身近でも、そういう要求は増していくだろう」と島本社長。「これも一つのチャンスと捉えたい。身の丈に合った取り組みが信頼につながる」と、診断結果を受けて今後の具体策を練る。
だが、迫る脱炭素化の波にも、中小企業の投資の動きは鈍い。
金属加工の機械音が響く神戸市内の町工場。男性社長は「時代の流れだから取り組まないと、とは思うが。設備の更新はなかなか進められない」と話す。
大手から産業機械などの加工・組み立てを請け負う。最も古い設備は補修を繰り返し、約30年間動かしている。二酸化炭素(CO2)などを排出していても、品質を保つ上で熱や蒸気を伴う工程は省略できない。取引先からの要請もなく「現状では脱炭素への意識も持ちづらい」と明かす。
電子機器の新和工業(神戸市中央区)は自前の工場を持たず、製造は他社に委ねている。松島寛和社長(41)は「自社でできることは限られている。委託先にCO2排出削減をお願いするしかない」とこぼす。
神戸商工会議所と日本政策金融公庫が今年2月に行った共同調査では、兵庫県内の中小企業の7割が「カーボンニュートラルを理解している」とした一方、「取り組んでいる」と答えたのは45%にとどまった。
それも節電や節水などの省エネや、クールビズの実施などが中心で、太陽光発電の導入や自社から出る温室効果ガスの把握など投資を伴う動きは少ない。ノウハウの不足や価格転嫁の難しさがあるという。
中小企業に詳しい神戸国際大学の中村智彦教授は「原材料の高騰など、中小は喫緊の問題に直面している。環境投資は価格転嫁も難しく、現状は利益の見えない先行投資でしかない」と指摘する。
その上で中村教授は「業種によってもCO2の削減幅は異なる。国はロードマップを示し、脱炭素に取り組む企業に付加価値が付くような枠組みをつくるべきだ」としている。(横田良平)
◇脱炭素支援新制度次々と 行政、金融機関費用補助や改善策助言◇
脱炭素対策に取り組む中小企業に対し、国や自治体、金融機関などが支援を強化している。
経済産業省は、既存の補助金制度に「グリーン枠」を設けるなどして支援策を拡充。環境省の脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)では、補助事業などが一覧できる。
兵庫県は6月、ひょうご環境創造協会内に「ひょうごカーボンニュートラルセンター」を設置した。企業からの相談に乗ったり、省エネ設備の導入などを支援したりする。尼崎市は、企業にエネルギー消費量を把握してもらい、専門家が具体的な改善策を助言する伴走型の支援制度を設け、案内窓口も一元化した。
官民連携の支援も広がりつつある。環境省近畿地方環境事務所(大阪市)とみなと銀行(神戸市中央区)は3月に連携協定を結び、補助金の活用をアドバイスしながら顧客の設備投資を支援する。同行と政府系金融機関の日本政策金融公庫神戸支店(神戸市中央区)は4月、地元中小の脱炭素化を支援する協調融資の枠組みを新設した。(石沢菜々子)
【特集サイト】未来を変える 脱炭素への挑戦

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