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赤色灯を回して出動する、神戸市消防局の救急車=神戸市内(本文とは関係ありません)
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赤色灯を回して出動する、神戸市消防局の救急車=神戸市内(本文とは関係ありません)

 8月に入り、新型コロナウイルスに感染し、自宅療養中だった高齢者の死亡が神戸市で2件続いた。どちらのケースも亡くなる前に家族が救急要請していたが、病院に搬送されることはなかった。神戸市は「対応に問題はなかった」とするが、第7波に衰えが見えない中、こうした不幸を防ぐ手だてはないのか。

 ■119番の先

 自宅療養中に亡くなったのはいずれも80歳以上の男性と女性だった。いずれの家族も死亡前に救急要請をしていたが、そのたびに搬送が必要という判断には至らなかった=経過表。

 同市では、119番すると消防管制室につながる。一般の病気やけがは出動した救急隊が医療機関と交渉して搬送するが、コロナ感染者の搬送は保健所の判断に委ねられる。厚生労働省が公表している「診療の手引き」の重症度分類を参考に判断することになる。

 呼吸困難や肺炎所見などの症状も基準となるが、「酸素飽和度を測定し、客観的に判断することが望ましい」とされ、軽症は酸素飽和度96%以上、入院が望ましいとされる中等症は96%未満となる。

 ■浮かんだ問題

 男性の場合、1回目の救急要請時点ではコロナ感染が判明しておらず、救急隊が病院と交渉したが、2回目は保健所が判断。基礎疾患があり、倦怠(けんたい)感が強く立つことができない状態だったが、酸素飽和度が97%だったため軽症と判断された。その12時間後に亡くなった。

 女性の場合も医療機関で軽症と判断され、自宅療養を開始した。ただ、保健所が連絡を取ったのは翌々日だった。酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを発送したというが、その日の深夜には体調が急変したため、間に合わなかった。

 厚労省の「診療の手引き」は、軽症でも「急速に病状が進行することもある」としている。当初、軽症と判断された男性も女性も、急変に備えて入院させていれば、別の結果があったかもしれない。さらに、女性の場合はパルスオキシメーターが届かず、重症度を測る客観指標がなかった。

 ■お手上げの現状

 女性の死亡事案について、神戸市健康局の幹部は「病院がまだまだ空いている状況だったら、このような高齢者なら入院してもらうこともあった。だが、今の段階では、他の患者との優先順位を考えると受け入れ先がなかった」と説明する。

 病床使用率は70%台だが、「ほとんどのベッドを回し、いっぱいいっぱいの状況。100%にはならない」とする。7月のコロナ関連の救急出動は805件にも上り、うち4分の1(218件)が搬送されていない。市の担当者は「今の感染者数の多さでは、急変しても医療機関につなげない」と現状を明かす。

 パルスオキシメーターは重症化リスクがある患者に郵送、または届けているというが、発熱外来が逼迫する中で発生届が出るのも遅れがちとなり、保健所からの連絡に時間がかかっているという。

 ■一般医療にも

 爆発的な感染拡大で、限界に達していると言える保健業務や医療の現場。自宅療養中だった2人の死亡事案は、高齢者の容体急変に対応できていない現状を浮かび上がらせた。

 コロナ以外も含めた救急出動件数も、8月1日に過去最多の410件を記録。医療機関への受け入れ照会が4回以上で、現場滞在が30分以上かかる「救急搬送困難事案」は急増し、7月最終週には193件にも上った。

 「コロナの感染拡大が一般医療にも影響している」と市の担当者。「感染の絶対数を抑えることが必要だ」と話す。

(高田康夫、名倉あかり)

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