6歳だった姉は28年前の阪神・淡路大震災で亡くなった。悲しみが癒えぬ町に僕が生まれたのは、それから5年後。今、大学4年生になった神戸市東灘区の加賀亮さん(22)は、震災のことを伝えていきたいと思っている。あの日に起きたこと。町の復興。娘を失った母の気持ち。震災後に生まれた世代の一人として、気負わず、学びながら。
震災で、約7割の建物が全半壊した東灘区の森南地区。亮さんの姉、桜子さんと家族が暮らしていた2階建ての一軒家も全壊した。見つかったとき、姉はまだ温かったという。
「僕、セーラームーンを見て育ったんです」。子どものころ、自宅にたくさんあった人気アニメの録画ビデオ。セーラームーンが大好きだった桜子さんが繰り返し見たテープの日付は、震災前で途切れていた。
会ったことのない姉は、いつもにこにこ、明るい女の子。母の翠さん(67)によれば、「まちの太陽」。桜子さんを思って家族が自宅前に建立した観音像には今も、誰かがお菓子を供えてくれる。姉は愛されていたんだな、と思う。
物心ついてから何となく聞き、何となく知っていた震災。もっと自分に引き寄せたいと感じたのは、大学生になってからの出来事がきっかけだった。
2年前の1月17日。神戸市主催の追悼式典で、母が遺族代表を務めることになった。「夢に出てきてください。32歳になった姿を見たいです」。当日の「代表のことば」にそう記した母の背を見た。
同じころ、在学する大阪芸術大学でのこと。「1・17」を前に「そろそろこの時期やな」、何げなくつぶやくと友人が不思議そうな顔をした。「え、何かあったっけ?」。地元では考えられない反応だった。
「隣の大阪でもそんな感覚なんや」。驚きとともに「風化」の2文字が頭に浮かぶ。まずは自分が学ばないと-。思い切って、地元の復興まちづくりを卒業論文の研究テーマにした。
森南地区は震災直後、土地区画整理事業の対象になった。姉が暮らした家の跡地は道路の拡幅予定地にかかり、亮さんが育ったのは換地先で再建された家。祖父の幸夫さん=2009年死去、当時(75)=は地元まちづくり協議会の会長を務めていた。
昨年10月、他のゼミ生や母にも協力してもらい、約1400世帯にアンケートを配る。予想を超える回答が返ってきた。
回答では、森南町で震災を体験した人は約3割。区画整理があったことを知っている人は約5割。住民の入れ替わりが進み、半数以上が「あの日」の町を知らない。亮さんもその一人だ。
うれしかったのは、町を「好き」と答えた人が全体の97%もいたこと。「復興の原動力は、町を愛する気持ち」。災害に強い町への第一歩はまず自分の町を知ること。そう結論づけた。
子どもと接するのが好きで、春からは大阪の児童養護施設で働く。寄り添いながら「防災のこと、復興のことも伝えていきたい」。
姉がいた町。みなが助け合った町。研究を通して、また好きになった。
【特集ページ】阪神・淡路大震災
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