約束した店、頑張って続けとうで-。神戸市東灘区の洋食店経営、板倉哲也さん(52)は三宮の東遊園地で、父輝行さんに思いをはせた。激震の1カ月前、靴職人として再出発を果たした父に、初めて打ち明けた料理人になる夢。互いを励まし合ったのが、最後の会話となった。節目の朝、新型コロナウイルスの影響を受ける商売の苦境も報告しつつ「いけるところまでいく。おやじのように全力で」と気持ちを新たにした。
かつて靴職人だった輝行さんは、同市長田区で工場を持つ経営者でもあった。だが他人の借金の保証人となり、廃業。長男の哲也さんら3人の子どもを育てるため、学校の校務員として長く働いた。好きな仕事を続けられず不満はあったはずだが、愚痴はこぼさなかった。
妻を亡くし、子どもも手を離れた後、「もう一度靴を」と退職。震災の半年前、長田で再び職人として働き始めた。年末には東灘から新長田駅近くのアパートへ転居。会社員だった哲也さんも東京から戻り、引っ越しを手伝った。
部屋に2人きり。自分の道を歩み出した父に、哲也さんが料理人となり店を持つ夢を明かすと、「ええんちゃう」と背中を押された。「お互い頑張ろうな」。父子最後のやりとりだった。
翌月の大地震で、アパートは炎に包まれた。帰神し、音信不通の父を捜して避難所を駆け回った哲也さんは、焼け跡に入った。1階の角部屋。金属の屋根をはがすと、骨があった。その日は輝行さんの58回目の誕生日、1月21日だった。
仕事も遊びもいつも全力の人だった。キャッチボールをすれば、決まって投手役。箸の持ち方など行儀を重んじ、叱るときは真っすぐ目を見て問いかけられた。「お前は性根がない」。職人らしく突き詰める性格で、面倒くさがりの息子にもどかしさを感じていたようだった。
厳しくも家族思いだった父の死。無念だったが、「やりたいことをやり始めたおやじは、上向きな考え方で終わった。だから僕も前を向けた」と哲也さん。スイッチが入った。
その年の秋に会社を辞め、料理の道へ。神戸、大阪で修業を積み、2009年に念願の店を開いた。別の場所で決まりかけたが、同市東灘区の魚崎中町に行き着いた。そこが偶然にも輝行さんの本籍地だったと後で知る。「簡単に辞められない」。覚悟は強まった。
4年目に入るコロナ禍は飲食業には荒波だ。外食の習慣が以前のように戻らない気もする。店を畳んだ仲間もいる。だが迷いはない。「動けんようになるまで頑張る。(輝行さんに)『まだまだや』と憎まれ口をたたかれる気がするしね」。あの時の決意を再確認した朝だった。
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