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レコードとプレーヤーが設置された客室=京都市中京区車屋町、エースホテル京都
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レコードとプレーヤーが設置された客室=京都市中京区車屋町、エースホテル京都

 アナログレコードの人気が再燃している。昭和の文化やアナログな商品などに若い世代が興味を抱く「レトロブーム」の広がりや、新型コロナウイルス禍で1人で音楽を楽しむ時間が見直されたことなどを背景に、ここ数年で中古レコードの取引価格が高騰。一時期落ち込んでいた生産数も、今では年間200万枚に届く勢いだ。1990年生まれ、“CD世代”の記者(32)が、なじみのないレコードの世界をのぞいてみた。

♫音飛びのノイズすら心地よい

 黒い円盤に慎重に針を落とすと、スピーカーから音楽が流れだす。生まれて初めて聞くレコードの音色。普段のデジタルの音に比べ立体感があり、時折、パチッとわずかに音を立てる音飛びのノイズも心地よい。

 ここは京都市中京区にある「エースホテル京都」の一室。全室にレコードプレーヤーを備えていると聞き足を運んだ。

 客室には日本と海外のレコードが計5枚、ランダムで置かれている。ロビーで貸し出しもあり、往年のアイドルやR&B、クラシックなどがそろう。宿泊客は30~50代が中心といい、同ホテルの担当者は「レコードを初めて体験する層と、懐かしく感じる層に分かれてはいるが、音楽を聞きながら部屋でゆっくり過ごされる方が多い」と話す。

 2020年の開業時、レコードが聞けるホテルは珍しく、交流サイト(SNS)で話題になったが、「最近はレコードブームや、ホテルステイを楽しむというコンセプトで、プレーヤーを置くホテルも出てきている」という。

♫ブーム後押しはTikTok

 一般社団法人日本レコード協会(東京)によると、レコードの生産数は1976年の約2億枚をピークに減少。2000年代には約10万枚まで落ち込んだが、09年から増加に転じ、17年以降は毎年100万枚以上が生産されている。21年には約191万枚と、約40億円の市場規模となった。

 復権の要因には、レトロブームに加え、日本にとどまらず、SNSを利用する若者を中心に「昔の音楽」の魅力を再発見する動きがある。

 動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」では、「シティポップ」と呼ばれる日本の70~80年代の楽曲でダンスを踊るのが世界的ブームに。泰葉の「フライディ・チャイナタウン」、松原みきの「真夜中のドア~stay with me」は海外でリバイバルされ、デジタル音源で聞くだけでなく、当時の中古レコードを手に取る若者も増えているようだ。

♫サブスク配信からも恩恵

 「実は、15年ほど前からアメリカではレコードがブーム。コロナ禍でさらに音楽をゆっくり楽しみたいという人が増えた」と話すのは、大阪・心斎橋の中古レコード店「レアグルーヴ」のオーナーで、エースホテル京都のレコードも選定している佐藤憲男さん(43)。コロナ禍前は、自身が営む店の客の7割をインバウンド(訪日客)が占めていたといい、豪州や米国、欧州からレコードを探しにくるのだとか。日本の若者も増えているという。

 とはいえ、今や音楽は、サブスクリプション(定額利用。サブスク)の配信サービスを使ってスマートフォンで聞くのが主流。レコードとなると、まだまだコアなファンに限られる印象があるが、佐藤さんは「サブスクの配信で聞いたアーティストのレコードを求めてやってくる若者も多い」。星野源や藤井風らレコードを発売する人気歌手も増えており、「配信とレコード販売は対極と思われがちだが、実はレコード店が受けている恩恵は大きい」と話す。

 興味が湧いてきたレコードの世界。中古プレーヤーをインターネットで購入した記者は勢いそのままに、人生初の自分の1枚を選ぶべく、神戸のレコード店を訪ねてみた。

レコードが聞きたい!(後編)

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