乗客106人と運転士が死亡した尼崎JR脱線事故は25日、発生から18年となった。現場に整備された追悼施設「祈りの杜」(兵庫県尼崎市久々知3)では、追悼慰霊式が営まれ、遺族や負傷者らが当時に思いをはせて手を合わせた。
会場には朝早くから、関係者を乗せたマイクロバスやハイヤーなどが次々に集まった。
事故発生時刻の午前9時18分が近づくと、現場近くをJR宝塚線の快速電車がゆっくりと通過した。電車内や周辺で犠牲者を悼む人の姿が見られた。
JR西日本の長谷川一明社長ら役員も発生時刻に合わせて黙とうした。
祈りの杜は、電車が衝突したマンションや隣接地をJR西が買い取り、2018年に整備した。19年から追悼式典の会場として利用を始めた。
アーチ状の屋根の下には、マンションの4階部分までが残され、損傷した外壁が事故の衝撃を物語る。慰霊碑や犠牲者の名碑、事故の概要を刻んだ碑文も並んでいる。
長谷川社長はおわびと追悼の言葉として「反省を深く刻み続けるとともに、安全な鉄道を築き上げることを誓う」と述べた。その後、参列者が献花した。
式典会場の周囲はシートで覆われ、一般には非公開とされた。現場を訪れたくなかったり、遠くで暮らしていたりする遺族ら向けにはオンライン配信で対応した。
JR西では事故後に入社した社員が全体の約6割に達しており、社内で事故の教訓をどう伝えるかが課題となっている。
事故車両の保存施設を、大阪府吹田市の社員研修センターの敷地内に25年ごろ整備する予定で、今年2月に着工した。社員教育に活用し、遺族らに公開する方針だが、遺族からは「現場で保存すべき」「誰でも見られるようにして」と求める声も出ている。(谷川直生)
◇
【尼崎JR脱線事故】 2005年4月25日午前9時18分ごろ、尼崎市のJR宝塚線塚口-尼崎間で、宝塚発同志社前行き快速電車(7両編成)が脱線し、線路脇のマンションに激突、乗客106人と運転士が死亡、493人が重軽傷(神戸地検調べ)を負った。JR西日本の山崎正夫元社長が業務上過失致死傷罪で在宅起訴され、井手正敬(まさたか)元会長ら歴代3社長も同罪で強制起訴されたが、無罪判決が確定した。
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