事故現場に立ち、亡き人の面影を探す。「あの日」を、あれからの年月を思い、涙が止まらない。尼崎JR脱線事故から18年となった25日、追悼慰霊式が営まれた「祈りの杜」(兵庫県尼崎市久々知3)には、遺族や負傷者が次々に訪れ、静かに手を合わせた。
「次男が亡くなったのが18歳。事故から同じ年月がたった」
事故で次男昌毅さん=当時(18)=が犠牲になった上田弘志さん(68)=神戸市北区=は式典後、言葉に詰まりながら振り返った。
事故が起きた午前9時18分には、慰霊碑の前で黙とう。家族の近況を報告し、「家庭菜園で育てているイチゴ、今日は間に合わなかったけど、また持ってくるね。穏やかに天国で過ごしてね」と話しかけた。
18年がたっても、息子がなぜ亡くなったのか分からない。受け入れられない。「事故がなければ、次男も結婚して、兄弟で子育てについて相談してたのかな」。想像し、胸が苦しくなる。そんな繰り返しだった。
せめて「JR西日本が事故を起こさない会社になったよ」と昌毅さんに報告したいが、今年1月に大雪で列車が立ち往生した際の備えの甘さなどを目の当たりにし、現実は事故前に逆戻りしているように感じた。
事故の風化への懸念も増す一方だ。特にJR西の若い社員の間で記憶が伝承されていないと感じるといい、「当時の会社の風土や当日の運転士の行動などを、時系列で伝えていかないといけない」と強く求める。
安全な社会の実現を目指し、街頭で訴えた遺族もいる。長女早織さん=当時(23)=を失った大森重美さん(74)=神戸市北区=は、重大事故を起こした企業などの刑事責任を問う「組織罰」の法整備を目指している。
山梨・笹子トンネル天井板崩落事故の遺族らとつくる「組織罰を実現する会」の代表を務め、この日はJR尼崎駅北側で署名活動をした。「何も変えなければ同じことが起こる。安全な社会を実現するためにも組織罰は必要」と声を上げると、何人もが足を止めた。
脱線した快速電車の4両目に大学生の長男が乗車していたという横田昌代さん(66)=兵庫県西宮市=も署名し、「1、2両目に乗っていたら亡くなっていたかもしれない。企業の責任を問える法律の整備を求めたい」と話した。(大橋凜太郎、池田大介)
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