今季からJ1神戸のフィジカルコーチに就いた咲花正弥氏(44)が目に見える成果を出している。昨季は接触プレーとは無関係に筋肉系のけがをする選手が相次いだが、今季の離脱はポドルスキぐらい。肉体改造、栄養摂取、体力回復において世界で先端の知見と経験則を用い、チームの総合力を高めている。(有島弘記)
咲花氏は東京都出身。米国の大学院で運動生理学を学び、国内外の一線級のアスリートを支えた。サッカーでは2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会のドイツ代表に帯同し、3位に貢献した。
元ドイツ代表のポドルスキも指導した一人。米国で働いていた咲花氏を神戸に誘い、クラブ側も熱心に口説いて獲得した。
最優先課題は、けがの予防だった。今季のキャンプ前、各選手の体の弱点を調べて補強プログラムを与えた。準備運動にも体幹を鍛え、股関節を柔らかくする要素を加え、走り方もゴムチューブなどを使って矯正。シーズンを通じて体に余分な負担をかけない走法を染み込ませている。
栄養を摂取するタイミングも重要視。「試合で欠乏したエネルギーをいかに早く補充するか」と、選手アンケートで人気だったカレー、パスタ、フルーツを試合後のロッカールームに並べた。W杯前までの過密日程中は本拠地ノエビアスタジアム神戸のプールも活用。「水圧で血流が増え、食事の栄養を体の末端まで送ることができる」。睡眠を取らせるため、試合翌日のオフも増やした。
パス速度の向上をはじめ、プレーの質につながるメニューも取り入れるなど、ピッチ内外でフィジカル改革が続く。