サッカーJ1の神戸は今シーズン8試合を残し、吉田監督が現場トップから退いた。リーグ3連敗で8位に落ち、クラブ初のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場が遠のいたタイミング。三浦淳寛スポーツダイレクター(SD)は、引く手あまたという新監督の獲得実現と偶然重なったと強調したが「(連敗と)全く関係ないとは言えない」と語った。
今季の神戸は一大転換を図ってきた。伝統の堅守速攻と真逆のパスサッカーへの挑戦。主導した三浦SDが描く理想が、親会社楽天が提携を結ぶスペインの名門バルセロナだった。
現場を託された吉田監督は、新加入の韓国代表鄭又栄(チョン・ウヨン)や三田らパス能力の高い選手を生かし、後方からボールをつなぐスタイルに着手した。大半の試合で相手よりもボールを保持し、今夏にW杯ロシア大会で中断するまで、チーム総得点は1位タイ。結果が伴い“バルサ化”は順調に映った。
■組織づくり後回し、守備崩壊
フロントは改革の速度を上げるため、夏の移籍期間に快速FW古橋、ビルドアップ能力に優れたDF大崎らを補強。さらに長年バルセロナの司令塔を務めたイニエスタも推定年俸約30億円で招いたが、守備崩壊という落とし穴が待っていた。
W杯の中断が明けると、クロスからの失点という昨季終盤と同じミスが続出。最後の采配となった15日のG大阪戦前まで2週間の猶予があったが、指揮官は立て直せず、天皇杯を含めて4連敗、中身も2得点10失点と散々だった。
チーム方針にこだわりすぎた側面もある。吉田監督は8月上旬の取材で今季の練習を攻撃に特化していると明かした。三浦SDが「チームの土台を築いてくれた」とねぎらう通り、リーグ上位のボール保持率を誇ったが、守備の組織づくりが後回しに。センターバックの主力だった鄭又栄が今夏に電撃退団すると、弱点が顕在化した。
昨夏のネルシーニョ前監督の解任に伴い、チームを率いて1年余り。若手の積極起用で、高卒ルーキー郷家を主力に育て上げるなど一定の成果も残したが、監督としては若い41歳。経験不足は否めなかった。(有島弘記)