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【特集】神戸・教員間暴力

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 2020年度新聞協会賞に、神戸新聞社の「教員間暴力のスクープと神戸の教育を巡る一連の報道」が選ばれた。公立小学校で、教員に複数の教員が暴行・暴言を繰り返すという衝撃的な事実を明らかにし、その背景に踏み込んだ点が評価された。

■事実の背景シリーズで解明

 先生が先生にいじめられている-。

 にわかには信じがたい一報だった。2019年秋。情報をつかんだ取材班は、裏付けに走った。小学校周辺、神戸市教育委員会、被害を受けた教員。情報の断片をつなぎ合わせて浮かび上がったのは、ひたすら重い事実の塊だった。

 決定的だったのは、被害教員を羽交い締めにして、激辛カレーを食べさせている動画だった。「ごめんなさい」。被害教員の懇願のような訴えに、複数の笑い声が聞こえる。他のメディアでも繰り返し報じられ、象徴的なシーンとなった。取材・報道が過熱する流れの中、取材班の狙いは、背景や土壌を深く掘り下げることだった。

 それには、理由がある。神戸市内では2016年、女子中学生がいじめを苦に自殺。その際の証言メモなどを市教委が隠蔽(いんぺい)したことが後に発覚した。17年には市立高校の男子生徒が教師による長時間の指導後、校舎から飛び降りて一時重体になった事案があった。いずれも学校や市教委の対応が批判されていた。

 「神戸の教育はどうなっているんだ」

 地域住民の不安が渦巻く中での事案発覚だった。最高潮に達した不信感や疑問を「みんなで考えよう」と銘打ち、シリーズ連載「学校いま 未来(あした)」をスタートさせた。

 第1部はまず、「神戸方式」「市教委と市長の関係」など論点を整理。第2部は東須磨小で起こったことを3年前にさかのぼって、関係者の証言から再現した。第3部は、新型コロナウイルスによる休校で見えてきたことをリポート。第4部は、学校の多忙化や教員の資質など、今日的課題を取り上げ、現場の動きを探った。

 さらに、神戸の教育風土を歴史的にとらえた特集記事を展開。戦後復興期から時代をたどり、「強い現場」の功罪を見つめた。

 また、連続インタビュー「先生はいま 私の考え」では、多彩な分野の方々に率直に尋ねた。「尾木ママ」こと尾木直樹さんをはじめ、学者や思想家、スポーツ関係者、お笑い芸人など幅広い切り口で、問題の見方と提言を語ってもらった。

 教員間暴力は、神戸の教育に横たわる独特の問題をあらわにしただけでなく、教員の資質や働き方、地域との連携など、現在の教育が抱える普遍的な課題も浮き彫りにした。コロナ禍による学校への影響も長引いている。

 学校は地域社会に浮かぶ船-。一連の取材で聞いた言葉だ。人づくりの場である学校は、地域と切っても切り離せない。この地に生きる私たちは、教育の取材をこれからも続けていく。

【読者からの声】

■広がる反響新たな問題も発掘

 教員間暴力のニュースには、読者から多くの反響が寄せられた。神戸新聞社は電話やファクス、封書で受け付けたほか、無料通信アプリ「LINE(ライン)」の公式アカウントでも投稿を募集した。

 一報を伝えて20日足らずで、ラインには約160件の投稿が寄せられた。

 「加害教員には二度と教壇にたってほしくない」「度を越した状況に気分が悪くなった」など率直な感想から、「これから教員を目指す子どもたちが減っていく」との懸念も。学校関係者は「結果的に問題をここまで放置した市教委、管理職の責任も重大」と指摘した。

 また、「人ごとではない」と自身の経験を打ち明ける投稿も寄せられ、取材を行った。中学校で臨時教員として働く女性は、正規教員から嫌がらせを受けたという。認定こども園の保育士も同僚からハラスメント行為を受け続け、体調を崩して退職に追い込まれた。

 現役教員や教員OBからの意見、提言も目立った。「傲慢(ごうまん)で自分が正しいと思い込む」「個人商店でそれぞれが尊重されすぎる」など教員の特性分析や、「業務量が増える一方で、現場は壊れかかっている」という悲鳴が寄せられた。

 一方、東須磨小の関係者から「新聞を読むのがつらい」「子どもがショックを受けている」という声も。同時に「ようやく、というかやっと、学校の閉鎖性が広く知らされた。どんどん報じて、うみを出してほしい」との要望もあり、関心の高さをうかがわせた。

2020/10/8
 

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