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【特集】神戸・教員間暴力

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教員間暴行・暴言問題の背景や課題について各分野の専門家が話し合う再発防止検討委員会=9月24日、神戸市中央区東川崎町1
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教員間暴行・暴言問題の背景や課題について各分野の専門家が話し合う再発防止検討委員会=9月24日、神戸市中央区東川崎町1
教職員に向けて、法令順守の意義を伝える吉山裕弁護士=9月16日、神戸市西区樫野台3、市立樫野台小学校
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教職員に向けて、法令順守の意義を伝える吉山裕弁護士=9月16日、神戸市西区樫野台3、市立樫野台小学校
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 社会を揺るがせた教員間暴力問題。教員の資質や人間関係、校長や教頭のあり方、ハラスメント対応など大きな課題が、「神戸の教育」に突き付けられた。単なる再発防止策にとどまらず、根本的に見つめ直すために、教育委員会や学校現場はどのように取り組もうとしているのか。研修などでうたわれる教員の意識改革には、一筋縄ではいかない難しさもにじんでいる。

東須磨小改革の取り組み

・先輩教員が若手の相談に乗る「メンター制度」の導入

・教員同士は「さん」付けか、「○○先生」と呼ぶ

・週1回、全教員による情報交換会を開く

・職員室や教室の廊下側の窓を、すりガラスから透明に変更

・5、6年で教科担任制の導入。複数の教員が児童を見守り、教員の業務負担軽減にもつながる

・教員の事務を助ける「業務補助スタッフ」を1人配置

・地域住民が学校運営に積極的に関わる「コミュニティ・スクール」の導入(2021年度から)

神戸市教育委員会

■専門家会議が 再発防止策検討

 神戸市教育委員会は7月、専門家ら5人による「教員間ハラスメント事案に係る再発防止検討委員会」を立ち上げた。問題が起きた要因や背景を多角的に分析し、年内にも再発防止策をまとめる予定だ。

 「この教員がいたから問題が起こったとか、個人的な資質の問題に帰した分析はすべきではないと考えている」

 委員長を務める兵庫教育大大学院の川上泰彦教授(教育行政学)は、委員会の狙いを語る。「個人に焦点を当てすぎると再発防止につながらない」

 メンバーには、いじめが起こるメカニズムを研究する甲南大の大西彩子准教授や、兵庫県立高校の元教頭で学校管理職を養成する岐阜大大学院の棚野勝文教授らが名を連ねる。会議は非公開で、月1回程度開く。

 川上教授は教員による相次ぐ不祥事などを受けて、市教委が2018年に設置した「組織風土改革のための有識者会議」で座長代理を務めた。

 昨年9月、市教委に提出した最終報告書では「他者の目が入りにくい学校組織では、不適切な指導などに対するリスク感度が低くなりやすい」と指摘。風通しのよい職場環境づくりや学校のマネジメント機能の向上などを盛り込んだ。

 しかし、わずか4日後。東須磨小の問題が神戸新聞社の報道で発覚した。

 川上教授は「提言を渡したタイミングで次の問題が出てきたことは、個人的に非常に残念だった」と振り返る。東須磨小の問題について「組織上よくないことがあったとき、それを止めたり、大きな事案になる前に収める仕組みが機能していない状況が見て取れる。根は同じところにあると思う」とみる。

 検討委が議論を進める上でベースとしているのは、外部の弁護士3人による調査委員会が、今年2月に公表した報告書だ。加害教員、被害教員をはじめ、東須磨小に在籍していた教員ら約50人から70回以上のヒアリングを実施し、加害教員らによる125項目のハラスメント行為を認定。市教委もこの事実認定に基づいて関係者を処分した。

 報告書が市教委に残した「宿題」は、心理学や人材育成などの専門家による背景分析と、根本的な再発防止策の検討だった。検討委は今後、各学校を巡回して学校運営を支援する「地区統括官」の配置など、現在の市教委の取り組みも踏まえて議論を本格化させる。(長谷部崇)

神戸市内小中学校

■弁護士招き、教員向け法令研修

 神戸市内の小中学校は7月から順次、弁護士を招いて、教職員向けのコンプライアンス(法令順守)研修を行っている。「ハラスメントは特定の学校や教師の問題ではない」「法令順守ができないなら教師の仕事は向いていない」。次々と投げ掛けられる言葉を、教職員は戸惑いながら受け止める。

 「ハラスメントは『そんなつもりはなかった』という言い訳は通用しない。だからこそ、同僚や子どもを指導する際は、慎重にしないといけない」

 9月16日、同市立樫野台小学校(西区)。放課後の教室に集まった教職員約30人に、兵庫県弁護士会所属の吉山裕さん(41)が厳しい口調で語り掛ける。

 同市教育委員会は本年度、吉山さんを含む弁護士7人を「学校法務専門官」として採用。来年3月末まで、希望する小中学校約140校で研修を重ねる。

 約1時間の研修には東須磨小の具体事例こそ出ないが、随所に反省点がちりばめられた。

 「そもそも、学校現場はハラスメントが起こりやすいんですよ」

 吉山さんは畳み掛けた。職場には子どもが多く“監視”機能が弱いこと、行事などチームで仕事をする機会が多いことが関係するという。

 「パワハラをする人は仕事ができる人が多く、同僚への要求も高い。指導がエスカレートしても、仕事ができる人の言うことは、周りもただしにくい」と吉山さん。東須磨小の問題でも、加害教員は「中核的な立場」だったとされる。

 さらに、ハラスメントを知り得る状況にありながら、適切な行為を怠れば処分対象になるとし、「先生たちが互いに法令順守ができているかどうか、常に意識して」と呼び掛けた。

 研修後、教職員からはさまざまな本音が聞かれた。

 男性教諭(51)は「いつか問題に巻き込まれるんじゃないかと不安感が強くなった。コンプライアンスは大切だが、教師の職業のなり手を減らしている要因じゃないか」と漏らす。別の男性教諭(39)は「教師は子どもたちへの関わりが最重要であって、法律やコンプライアンスについては勉強不足。やりづらくなったなと感じるが、時代に対応していかなければ」。

 吉山さんは「学校は外からの目が届きにくく、先輩の価値観を大切にするという文化がある」とし、「『昔は良くても今はだめ』と外部の専門家が指摘することで、少しずつ意識を変えていけるのでは」と期待を込めた。(斉藤絵美)

2020/10/8
 

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