人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発でノーベル医学生理学賞が決まった8日夜、京都大で記者会見に臨んだ山中伸弥教授(50)が、ひときわ硬い表情で口を開いた。
「私たちと難病に苦しむ人の1日、1カ月は違う。私たちも日々挑戦している。希望を持ってほしい」。それは3年前、難病と闘う少年に治療法の発見を誓った時の言葉とよく似ていた。
中学3年の山本育海(いくみ)君(14)=明石市=は8歳の時、「進行性骨化性線維異形成症(FOP)」と診断された。200万人に1人の難病。筋肉細胞がけがなどに反応し、骨になっていく。激痛もあり、やがて体を動かせなくなる。治療法はない。
iPS細胞から自分と同じ筋肉細胞を作って実験すれば、進行を止める物質が見つかるかもしれない-。育海君が母智子(ともこ)さん(39)と京大を訪ねたのは2009年。山中教授は「いっくんと僕らの1日の長さの違いを、よく分かっているつもり」と応じた。3カ月後、育海君は研究に望みをかけて皮膚を提供した。
治療法のない難病との闘いを「神さまからの宿題」という育海君。ノーベル賞を機に、研究がさらに加速するかもしれない。「これで宿題も早く解けると思う」。テレビ画面に映る山中教授をじっと見詰めた。
2012/10/11









