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ノーベル賞受賞の記念講演を終え、記者の質問に笑顔で答える山中伸弥京都大教授=7日、ストックホルム(共同)
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ノーベル賞受賞の記念講演を終え、記者の質問に笑顔で答える山中伸弥京都大教授=7日、ストックホルム(共同)

ノーベル賞受賞の記念講演を終え、記者の質問に笑顔で答える山中伸弥京都大教授=7日、ストックホルム(共同)

ノーベル賞受賞の記念講演を終え、記者の質問に笑顔で答える山中伸弥京都大教授=7日、ストックホルム(共同)

 「手術が下手だった」「心臓病の研究所で唯一の肝細胞がんの研究者になった」-。ノーベル医学生理学賞を受賞する山中伸弥京都大教授(50)は7日(日本時間8日未明)、ストックホルム市カロリンスカ研究所講堂での記念講演で何度もジョークを飛ばして会場を沸かせ、詰めかけた約700人の聴衆の心をつかんだ。

 山中伸弥京都大教授のノーベル賞受賞記念講演の要旨は次の通り。

 【はじめに】

 50年前、私の生まれた年に細胞核の初期化の分野を開拓したジョン・ガードン氏とノーベル医学生理学賞を受賞できることを光栄に思います。

 【研究者への道を歩み出した頃】

 整形外科医から基礎医学に転向した私は「予期せぬ結果」と「素晴らしい師」と出会えた2点でとても幸運でした。

 大阪市立大では、大学院生として三浦克之先生の指導のもと、三浦先生の仮説を確かめる実験をしました。血圧を下げないだろうと予想される物質を犬に投与したところ、予想に反して血圧が下がりました。驚いて三浦先生に報告したところ、自分の仮説が外れていたにもかかわらず一緒に喜び、研究を続けることを励ましてくれました。

 1993年に博士号を取得し、米グラッドストーン研究所のトーマス・イネラリティ博士のもとで研究を始めました。ここでも、イネラリティ博士の仮説を証明すべく、「APOBEC1遺伝子」を過剰に発現させると、コレステロール値が下がることを期待して実験しましたが、予想が外れ、この遺伝子が肝細胞がんに関わることが分かりました。しかしイネラリティ博士はその結果に興奮し、研究を続けることができました。

 私には2タイプの師がいます。一つ目は三浦先生やイネラリティ博士のような研究者としての師です。彼らのようになりたいけれど、なかなか苦戦しています。二つ目は、自然そのものです。自然は時に予想していなかったことを私に教えてくれ、新たなプロジェクトへとつながりました。

 【iPS細胞に至る研究】

 APOBEC1遺伝子の研究過程で、NAT1という遺伝子が見つかり、マウスの胚性幹細胞(ES細胞)にとって大切なことが分かりました。ES細胞にはほぼ無限に増殖する能力と、さまざまな細胞に分化する能力がありますが、NAT1は後者の多分化の能力に重要であることが分かりました。

 このころ、米国から日本に帰り「帰国後うつ」という病気にかかりました。マウスのES細胞の研究が患者さんの助けになるのか、研究の方向性について悩んでいましたが、二つの出来事によって回復しました。一つは、米国のジェームス・トムソン博士のヒトES細胞の樹立というニュースです。もう一つは99年、37歳の時に奈良先端科学技術大学院大で研究室を持ったことです。

 私は「受精卵からではなく、患者さん自身の体の細胞からES細胞のような幹細胞を作り出すこと」を研究室の長期目標として掲げることにしました。それまでに明らかにされていた研究の流れから、理論的には可能だと思っていました。

 20年、30年かかるか、あるいはそれ以上か見当もつきませんでしたが、2006年にはマウスで、07年には人でiPS細胞の樹立に成功。四つの因子で細胞核を初期化できることを示すことができました。

 この成功は私だけのものではなく、3人の若い科学者、高橋和利君、徳沢佳美さん、一阪朋子さんの努力なしには成し遂げられませんでした。また、iPS細胞に至る三つの道筋をつくった科学者たちにも感謝したいと思います。

 体細胞の核を卵に移植することによる体細胞の初期化研究の流れ。ガードン氏や多田高京都大准教授らによる成果。

 単一の転写因子によって細胞の運命を変える研究の流れ。

 ES細胞など胚からの未分化細胞による多能性に重要な因子の同定の流れ。

 【iPS細胞の可能性】

 私は京都大iPS細胞研究所の所長であり、グラッドストーン研究所の上席研究者でもあります。iPS細胞の応用には三つの可能性があり、その研究を推し進めています。

 一つ目は、患者さんからiPS細胞を作製し、それを患部の細胞に分化させ、病気を再現することで、病気の解明や薬剤の探索に活用することです。

 例えば筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんに体細胞を提供していただいてiPS細胞を作り、神経に分化させ、病気の状態を探る研究をiPS研究所の井上治久准教授が行っています。

 二つ目は、iPS細胞から分化させた細胞で薬の副作用を調べること、三つ目は再生医療です。

 今、新しい流れが出てきています。(iPS細胞を経ずに)細胞の種類を直接変える「ダイレクトリプログラミング」などで、近い将来、こうした研究者たちにもう一つノーベル賞を取ってほしい。(共同)

2012/12/8
 

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