真新しい、緑色のランドセルが揺れる。4月下旬。道場小学校へ入学したばかりの剛志(つよし)が、校歌を歌いながら元気いっぱいに登校していた。立派な眉毛に、いがぐり頭。愛嬌(あいきょう)がある素朴な雰囲気が、どこか〝昭和〟を感じさせる。
2歳半で尼学に来た。子どもが暮らすユニットは、幼児と小学生以上で分かれる。剛志は春から今のユニットに移り、大学進学した瑛太の部屋を引き継いだ。
剛志のユニットでは中学3年までの5人が暮らす。中学生は、最年少の剛志がかわいくて仕方がない様子。一緒に遊び、時にからかう。剛志がほっぺたを膨らまして「もおーっ」と怒り、足元にまとわりつくと、優しい笑みがこぼれる。お兄ちゃんの顔つきになっていた。
緑のランドセルは、剛志が自分で選んだ。職員と一緒にイオンモールに行き、ずらりと並ぶ中から「かっこいい」と一目ぼれした。買って帰ると、背負って尼学中を回った。「見て見て、僕のランドセル」。入学を待ちわびた。
道場小は全校児童129人の小規模校。1年生は19人で、半数は剛志と同じ道場幼稚園の出身だ。「進学に当たってのギャップは、ほとんどない」と職員。ずっと地域にある尼学は、小学校にとっても「当たり前の存在」という。
入学式には職員らと出席した。きちんと座り、お利口さんにしていた。
尼学から小学校までは約1・5キロ。1年生にとって、ランドセルを背負って歩くのは一苦労だ。入学前に登校の練習をしていたころは、あと一息の所で「しんどい」「歩かれへん」と座り込んだ。
それから1カ月ほど。通学路は遅咲きのサクラの花も散り、新緑がまぶしい。剛志は大きな歌声を響かせ、楽しんで登校していた。(文中仮名)
2018/5/6