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異国のリアル つながる教室 神戸の企業開発、67カ国ネットワーク 松蔭中、関学高…全国200校・団体 文化や社会問題学習、不登校支援も
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 国際交流を進める神戸市中央区の民間会社「With The World(ウイズ・ザ・ワールド)」が、オンラインで世界とつながる学習を推進している。67カ国の教育機関とネットワークを築き、異国の文化や考え方に触れる機会になると、不登校の学習にも採用され始めた。五十嵐駿太社長(33)は「刺激的な出会いを通じ、視野を広げるきっかけをつかんでほしい」と話している。(津谷治英)

 関西学院高等部の教室で、生徒たちが一台のパソコンを囲む。

 画面に城が映し出され、フィリピン人の講師が英語で話しかけた。「この城はどこの国にあるでしょう?」。サポートするスタッフが日本語に翻訳。ヒントを出し、答えに導く。

 同社が開発したシステム「VLP(バーチャル・ラーニング・プラットフォーム)」だ。パソコンの先は世界中の教室とつながっており、知らない若者同士が英語で意見を出し合い、議論が深まることもある。

 コーディネーターの藤輪翔大さん(34)は、「探究心を高めながらコミュニケーションが深まる。英会話力向上の動機にもつながります」と説明する。

 VLPの参加国は世界各地に広がる。米国、英国、エジプト、ケニア、メキシコなど欧米からアフリカ、南米に広がり、各国の講師と日本をつなぐ。神戸の松蔭中学、西宮の関学高等部をはじめ大学、専門学校など全国の約200校・団体が導入する。

      ◇

 同社は千葉県出身の五十嵐さんが2018年に創業した。大学卒業後、人材サービス大手に就職し、淡路市などで勤務後に独立した。

 学生時代に世界を旅した経験から海外交流事業を構想。新型コロナ禍で対面学習が制限される中、オンライン授業の需要が増え、規模を拡大した。

 VLPが扱うテーマは幅広い。歴史、文化、政治、経済をはじめ、都会のごみ処理をするフィリピンの村、エイズで親を亡くしたザンビアの遺児の生活など社会問題も取り上げる。

 「海外のリアルを身近に感じる。これこそ生きた教育」と、狙いを説明する。

 不登校だった高校1年の男子生徒は「VLP」を体験。インドネシアの少年とのやりとりが盛り上がり、自身を見つめ直すきっかけをつかみ、ジャカルタの大学へ留学した。

 「日本しか見ていなかった狭い価値観から解放されたようでした」と五十嵐さん。この経験から、将来の進路に不安を持つ不登校の再チャレンジにも役立てたいと考えた。

 東京都品川区の教育総合支援センターに呼びかけたところ、不登校の学習支援に採用され、現在、小中学生の54人が利用する。マイペース参加で1日あたり約5人が参加する。

 担当者によると、当初は積極的に話す子は少なかったが、交流が深まると変化する。「日本語で返していた子が、いつの間にか英語で話すようになることもある」という。

 「子どもたちの成長に寄り添い、VLPの可能性を探りたい」と五十嵐さん。

 VLP利用の詳細は同社ホームページから。

2025/12/9
 

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