坂をのぼれば
読者の皆さんから寄せられた情報などを基に、神戸の急坂を巡った連載「坂をのぼれば」。5月の夕刊記事も合わせると、これまでに12の坂を紹介した。汗だくになって上ったり、車のギアをローにして恐る恐る進んだり、思わぬ青春の思い出話を耳にしたり。それぞれに特徴があり、今も鮮やかに脳裏によみがえる。果たして、「神戸ナンバーワン」の坂道は-。(上田勇紀)
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まずは神戸市の道路台帳平面図に記載された勾配で比べてみる。数字上のトップは、須磨区潮見台町のきつね坂=表の①=だった。山陽須磨駅西にある高架をくぐって進んだ辺りは18・5%だが、大きく左カーブした後の短い区間は何と42・6%。数多くの情報を精査したが、この値を超える坂には出合わなかった。
一方、記者の体感では、東灘区の阪急御影駅北側、深田池から甲南病院へ続く坂=表の②=が最もきつかった。直線でざっと300メートルあり、坂の勾配は36・3%。途中で上るのをやめようかと思うほど、足が重く感じられた。
“ダークホース”は東灘区住吉山手の「クネクネ坂」=表の番外。白鶴美術館南側から赤塚山公園へ続く曲がりくねったこの坂は、残念ながら同平面図に勾配の記載がない。だが、上ったことがある人は口をそろえる。「ここのきつさが神戸ナンバーワンだ!」
心臓の高鳴りが思い起こされ、記憶に刻まれているのは、垂水区旭が丘3の坂=表の⑤。勾配19・7%の坂の反対側も15・8%の坂で、車で上って味わったジェットコースターのようなスリルが忘れられない。
紹介しきれなかった坂もいくつかある。
東灘区御影山手の住宅街を上り、変電所の西側に至る長い坂は「近所の人たちが初日の出を拝むために上る。六甲山まで登らなくても眺望が素晴らしい」などの情報が寄せられた。同平面図には坂の下部の勾配(9・5%)しか記載がないが、上部は体感的にかなりきつかった。中央区の神戸労災病院に続く坂をナンバーワンに推す意見もあった。
「坂を愛する人たちが、神戸にはこんなにもいるんだ」。取材でそう気付かされた。どの坂を訪ねても、歴史や思い出を語ってくれる人がいる。次はどんな坂に出合えるだろう。上るのはしんどいが、ひそかにわくわくする自分がいる。
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「もっときつい坂がある!」など、神戸の坂に関する面白い情報を引き続き募ります。神戸新聞報道部にメール(kobe‐ban@kobe‐np.co.jp)かファクス(078・360・5501)でお寄せください。
2018/6/29